新築戸建てやマンションを買うときに耳にする『住宅性能評価』。
「何のことだろう?」と疑問に思っていませんか?
住宅性能評価書とは、分かりやすくいうと家の性能をあらわした通知表のようなもの。
その住宅の正確な性能がわかるだけでなく、住宅性能評価書を取得することで将来的にもさまざまなメリットがあります。
この記事では、住宅性能評価とはどんなものなのか、評価を受けるメリットなどを宅建士がお伝えしていきます。
安心して住宅購入するための参考にしてくださいね。
住宅性能評価とは?
住宅性能表示制度とは、『住宅の品質確保の促進等に関する法律』(通称:品確法)にもとづく制度のひとつです。
国土交通大臣に認定された第三者機関が、“全国共通のルール”にしたがい、住宅性能を評価します。
この調査のことを『住宅性能評価』と呼んでいます。
住宅性能評価は強制ではないため、評価を受けるかどうかは建築主(施主)の判断にゆだねられています。
国土交通省によると、令和元年度に設計住宅性能評価を受けた人の割合は新築住宅のおよそ3割。
この割合は4年連続で増加傾向にあり、「上質な家を購入したい」という消費者ニーズが高まっていることが見てとれます。
住宅性能評価の意味
住宅性能評価を受けることで、消費者は安心して住宅を購入できるようになります。
住宅は、よほどの専門知識がないかぎり、どの性能がどのぐらい評価されるものなのかを見分けることはむずかしいですよね。
また、完成した家を外から見ただけでは、正確な性能を判断することもできません。
こうした問題の解消法として、住宅性能評価はとても有効な手段のひとつ。
数値化された客観的なデータがあれば、工法の違うハウスメーカーだとしても、耐震性や耐火性といった住宅のスペックが一目で分かるようになるのです。
つまり、購入者はさまざまな物件の性能をかんたんかつ分かりやすく比較できるということですね。
さらに、完成すると見えなくなってしまう構造の部分も、あらかじめ専門家にチェックしてもらえるので、より安心して住宅を購入できるでしょう。
住宅性能評価の流れ
住宅性能評価は、国土交通大臣に認定された登録住宅性能評価機関がおこないます。
住宅性能評価の流れは、以下のとおりです。
【1回目の申請】設計段階
- 設計図書の提出
- 設計検査
- 『設計住宅性能評価書』の交付
【2回目の申請】施工段階
- 現場検査、竣工現場検査(計4回のチェック)
※中古物件は現況検査 - 『建設住宅性能評価書』の交付
引用:国土交通省(新築住宅の性能表示制度ガイド)
【申請費用の目安】
- 10~30万円ほど
- 等級が上がるほどコストも高くなる
住宅性能評価書は、以下の2種類ありま す。
- 設計住宅性能評価書
- 建設住宅性能評価書
このうち、2回目の『建設住宅性能評価』については受けなくてもよいことになっています。
しかし、設計書どおりに施工されているかをチェックしなければ意味がないので、基本的にはセットでおこなうことをおすすめします。
なお、住宅性能評価の申請者はどなたでもOKです。
しかしその申請には、申告書のほかに設計図書といった申請書類をすべてそろえて提出しなければなりません。
そこで、あらかじめ建築会社に住宅性能評価を受けたい旨を伝えたうえで、申請を依頼するのがスムーズでしょう。
※性能評価をおこなう登録機関は、住宅性能評価・表示協会ホームページで検索できます。
住宅性能評価書の基準
住宅性能評価書に記載される性能は、10分野にわかれています。
【必須項目 4分野】
【選択項目 6分野】
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住宅性能評価の基準がどのような内容になっているのか、くわしくみていきましょう。
検査部位は戸建てとマンションとで異なるので注意が必要です。
構造の安定【必須項目】
構造体の丈夫さをあらわす評価項目です。
- 耐震等級:3段階
- 耐風等級:2段階
- 耐積雪等級:2段階
- 地盤の強さ
- 基礎の強さ
地震や台風に強い家ほど、等級の数字が上がります。
火災時の安全【選択項目】
耐火性のレベルをあらわす評価項目です。
- 感知警報装置設置等級:4段階
- 避難安全対策
- 脱出対策
- 耐火等級:3~4段階
火災が起こったときの避難のしやすさや、延焼のしにくさがポイントになります。
劣化の軽減【必須項目】
劣化のしにくさをあらわす評価項目です。
- 劣化対策等級:3段階
柱や土台などの耐久性が高い家ほど、等級数は上がります。
維持管理・更新への配慮【必須項目】
メンテナンスのしやすさをあらわす評価項目です。
- 維持管理対策等級:3段階
- 更新対策:3段階
- 間取り変更のしやすさ(マンション)
配管の清掃・点検・補修・更新など、維持管理のしやすさがポイントです。
温熱環境【必須項目】
断熱性レベルをあらわす評価項目です。
- 断熱等性能等級:4段階
窓や外壁などの断熱性能が高く、省エネルギーの家ほど等級は上がります。
空気環境【選択項目】
室内の空気環境レベルをあらわす評価項目です。
- ホルムアルデヒド対策
- 換気対策
シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒドの量、換気設備などをチェックします。
光・視環境【選択項目】
採光性のレベルをあらわす評価項目です。
- 窓の大きさ
- 窓の方角
明るく採光たっぷりな家ほど、等級が上がります。
ただし窓を大きくすると、そのぶん耐震性や断熱性などが下がるため注意が必要です。
音環境【選択項目】
マンションの遮音性レベルをあらわす評価項目です。
- 重量床衝撃音対策:5段階
- 軽量床衝撃音対策:5段階
- 壁の遮音性能:4段階
- 開口部の遮音性能:3段階
上下左右の住戸に対しての、音の伝わりにくさがポイントになります。
高齢者への配慮【選択項目】
高齢者へのやさしさレベルをあらわす評価項目です。
- 高齢者等配慮対策等級:5段階
移動時の安全性や介助のしやすさなど、高齢者が暮らしやすいバリアフリーな家であるかがポイントです。
防犯【選択項目】
防犯性のレベルをあらわす評価項目です。
- 開口部の侵入防止対策
窓やドアに、面格子や防犯ガラスなど侵入防止に有効な建材が使われているかどうかといった、防犯面でのポイントをチェックします。
住宅性能評価を受けるメリット
住宅性能評価は強制ではないうえ、申請には別途費用がかかります。
「本当に必要なの?」と感じる人もいるかもしれません。
そこで、住宅性能評価を受けるメリットについてお伝えします。
住宅性能評価を受けようか迷っている人は、判断材料のひとつとして検討してみてくださいね。
住宅ローンや保険料を抑えられる
住宅性能評価を受けていると、住宅ローン金利が優遇されたり、地震保険料を安くおさえたりすることができます。
担保となる住宅の性能レベルがはっきりしていることから、銀行や保険会社の立場からみるとリスクが減るからです。
『住宅性能評価書』という国からのお墨付きをもらうことにより、金銭面での優遇を受けられ、ランニングコストもおさえられるという点はメリットといえるでしょう。
将来の資産価値が上がる
住宅性能評価を受けていると、将来家が高く売れる可能性があります。
世の中には一戸建てやマンションなど、たくさんの中古物件があります。
同じ築年数なら、住宅性能がよくわからない家よりも、住宅性能評価を受けた品質の良い家のほうが安心して購入できますよね。
中古住宅市場では、“住宅性能評価書あり”という付加価値がつくことにより、資産価値がさらに高まるメリットがあります。
紛争処理の申請ができる
住宅性能評価を受けていると、住宅トラブルがあったとき、指定住宅紛争処理機関(弁護士会)に1件1万円で紛争処理を申請できるのがメリットです。
住宅は、完成から数年後に不具合が出ててしまうこともあるのが現実。
しかし、「建築会社に言っても取りあってもらえなかった」というケースも意外に多いものです。
その点を踏まえてみると、住宅性能評価を受けていれば、紛争処理を専門機関がサポートしてくれるというのは安心できますよね。
ただし、紛争処理の申請ができるのは、
- 設計住宅性能評価書
- 建設住宅性能評価書
上記2つの評価書を取得していることが条件となるので、申請をするときは注意してくださいね。
まとめ
住宅性能表示制度は、10分野の観点から家の性能を客観的に評価する制度です。
住宅性能評価を受けていることで、住宅の資産価値が上がったり、紛争処理の申請ができたりといったメリットもたくさんあります。
住宅性能評価を受けるには費用がかかりますが、品質の良い家づくりをしたい、将来住宅の売却も検討しているという人は、ぜひこの制度も検討してみてくださいね。
みなさまが住みよい住宅と出会えることを願っています。
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