火災保険の水災補償とは?支払要件や補償外の被害&判断するポイントを解説

水災補償とは、火災保険に追加できるオプションのひとつ。

いざというときでも、補償があることで安心はできますが、火災保険料も上がってしまうため、水災補償をつけるかどうかお悩みの方も多いのではないでしょうか。

そこでこの記事では、水災補償の範囲、保険金額、加入を判断するポイントなど、くわしくお伝えしていきます。

最適な保険選びの判断材料としても、ぜひ参考にしてみてくださいね。

 

水災とは

火災保険における「水災」とは、雨が原因で生じた損害のことを指します。

≪水災被害、水災事故の例≫

  • 台風で河川が氾濫し床上浸水した
  • ゲリラ豪雨でマンホールの水があふれ、床上浸水した
  • 集中豪雨で土砂崩れが起こり、家が流された

【①水災の原因】

  • 集中豪雨
  • ゲリラ豪雨
  • 暴風雨
  • 台風
  • 海面上昇(低気圧時)

 

【②自然災害の例】

  • 洪水
  • 河川の氾濫
  • マンホールから水が吹き出す
  • 土砂災害
  • 高潮

 

【③損害の例】

  • 住宅の床上浸水
  • 家財の破損、汚損
  • 建物が流される

 

このように、

①原因:大量の”水”

②災害:大規模な自然災害が発生

③損害:住宅に被害がおよぶ

このことを「水災(水害)」と呼んでいます。

近年は地球温暖化の影響で、都市部でも大規模な水災が増えていることも事実。

いざというときのために、しっかりと備えておくことが大切です。

 

 

水災補償の条件と損害保険の金額

ここからは、水災補償の内容について見ていきましょう。

補償対象や支払われる保険金の額は、保険会社やプランによって異なるもの。

ここでは、一般的な補償内容について説明していきます。

 

一般的な支払要件と保険金額

水災補償の対象となる支払要件、損害保険金額は以下のとおりです。

【支払要件】

以下のいずれかに当てはまる場合

  • 床上浸水(土間、たたきを除く)
  • 地盤面から45cmを超える浸水
  • 再調達価額(※)の30%以上の損害

※再調達価額…新たな家を購入するための資金。保険会社によって「保険価額」と呼ばれることもある。

 

【損害保険金額】

損害額-免責金額=損害保険金

※免責金額…自己負担額。契約時に0~10万円程度の範囲で設定する。

 

床上浸水した場合は、無条件で水災補償の対象となります。

しかし、床下浸水や被害が”軽微”であった場合は、水災補償の対象外。

支払われる保険金額は、災害前と同じ状態に戻すために必要な「損害額」から、「自己負担額」を差し引いた金額となるため、損害分の全額がもらえないこともある点に注意しましょう。

 

Q.支払う保険料はいくら?

火災保険に水災補償をつけたときの保険料の目安は、以下のとおりです。

【火災風災水災補償あり
134,960円~242,920円/10年
【火災風災のみ】
68,370円~96,300円/10年

参考:価格.com

保険会社や補償額によって保険料は変わるためあくまでも目安にはなりますが、「水災補償あり」の場合、火災保険料は年間6,000円~15,000円ほど上乗せされます。

 

支払割合が下がる特約もある

「水災補償はつけたいけど、保険料負担はなるべくおさえたい…」という人向けに、以下のような特約を用意している保険会社もあります。

支払要件 床上浸水または地盤面から45cmを超える浸水 再調達価額の30%以上の損害
再調達価額の15%未満の損害 再調達価額の15%~30%未満の損害
損害保険金の支払金額 保険金額×5%
(上限100万)
保険金額×10%
(上限200万)
損害額または保険金額×70%

保険料は割安になりますが、そのぶん支払われる保険金額の割合も下がるという特約です。

一見すると、比較的手ごろな保険料で最大70%の補償が出るという内容は、満足のいくもののように感じるかもしれませんね。

しかし、水害に遭ったときに、『補償割合”最大70%”』という金額は、けっして十分なものとはいえません。

例えば、洪水で建物ごと流されてしまった場合、建て直しにかかる資金が不足する恐れもあります。

さらに、家を失ってもなお残るものは住宅ローン。

つまり新築費用に加え、流されてしまった住宅のローンも払わなければならないのです。

このような特約をつけるのであれば、こうした状況に陥る可能性も考慮したうえで、しっかりと貯蓄しておく必要があると言えるでしょう。

 

補償範囲は建物or家財から指定する

火災保険の補償対象は、「建物」「家財」「建物と家財」の3つのうち、いずれかを指定することになります。

どの補償を選ぶかによって、被災したときの補償範囲や保険金額が変わるため、しっかり把握しておきましょう。

【建物の補償内容の例】

  • 建具(ドア、窓)
  • 床(畳、フローリング)
  • 壁(クロス)
  • 建物に固定された電気・ガス・冷暖房設備(トイレ、システムキッチン、ユニットバス、床暖房、エアコン)
  • 屋外設備(門扉、ブロック塀、物干し、庭木、敷石、車庫、物置)

 

【家財の補償内容の例】

  • 家具
  • 家電製品(冷蔵庫、テレビ、洗濯機、電子レンジ)
  • 衣類
  • 自転車、原付
  • 明記物件(あらかじめ申告した30万円を超える貴金属や美術品)

 

家財は、一度でも浸水すると使いものにならなくなってしまうケースがほとんど。

そんなときに、新しいものへと買い替えるための十分な保険金がおりれば、より早く生活を立てなおすことができます。

水災が起こったとき、どの程度の補償があれば損害をある程度カバーできるのか、よく検討したうえで補償範囲を選ぶようにしてくださいね。

 

 

【注意】水災補償の対象外になる被害


自然災害のなかには、残念ながら水災補償の対象にならないケースもあります。

ここでは、水災の補償対象外となるケースについて、間違えやすい被害例とともにみていきましょう。

 

地震や噴火による水害

地震や噴火によって起こる水害は、もともと雨による災害ではないため水災補償の対象外となります。

  • 地震後の津波によって家が流された
  • 地震による土砂崩れで、建物が損壊した
  • 噴火後に火山灰が流出したことで洪水が起こり、床上浸水した

最終的な被害状況は水災とおなじでも、地震や噴火が原因のときは、水災ではなく「地震保険」の対象範囲となります。

水災補償は、雨が原因によって生じる被害にのみ適用される補償と覚えておきましょう。

 

通常の水濡れ(みずぬれ)や漏水

住宅設備の破損による漏水(ろうすい)や、水濡れ(みずぬれ)被害は、雨が原因ではないため水災補償の対象にはなりません。

  • マンション上階からの水漏れで、床や壁が汚損した
  • 水道管破裂による漏水で、部屋が水浸しになった
  • 台風の日に雨漏りし、家電が壊れた

マンション住人の不注意による水濡れや、配管事故による水のトラブルは、水災補償ではなく「水ぬれ補償」の対象となります。

 

雨漏りについては、自然災害が原因であることがあきらかな場合のみ、水災補償ではなく「風災補償」が適用されます。

たとえば、台風で屋根や雨どいが破損し、その破損箇所から雨水が侵入したケースなどです。

しかし、“建物の経年劣化”で雨漏りをしたケースは、水災補償はもちろん火災保険関連による補償は一切受けられません。

 

雹(ひょう)や雪

おなじ天候不良が原因であっても、雹(ひょう)や雪による損害は、水災補償の対象外です。

  • がぶつかって窓ガラスが割れた
  • の重みで屋根が破損した
  • 雪崩に巻き込まれて、建物が倒壊した

雹や雪が原因のときは、「雹災(ひょうさい)補償」または「雪災(せつさい)補償」の対象となります。

先ほど同様で、水災補償ではありません。

例外として、雪が溶けたことによって洪水が起こる「融雪洪水」の場合は、水災補償が適用されます。

 

 

火災保険の水災補償を検討すべきポイント

水災に備えることは大切ではありますが、とはいえすべての住宅に水災補償が必要になるとはかぎりません。

損害保険料率算出機構によると、2020年度の水災補償加入率(付帯率)は全国で66.6%。

そこで、水災補償の加入を検討するべき住宅のポイントをお伝えします。

「水災補償には入ったほうがいい?」とお悩みの方は、ぜひ参考にしてくださいね。

 

自宅が河川に近い

自宅が河川に近い場合は、河川から離れている家と比べて水災被害に遭うリスクがどうしても高くなってしまうため、水災補償への加入を検討するべきでしょう。

ゲリラ豪雨や台風などで河川が氾濫し、周辺地域一帯で床上浸水となる可能性も高いからです。

とくに近年は、予想をはるかに超える記録的雨量となるケースも増えていますよね。

河川に近い場所に自宅がある方は、水災補償への加入を強くおすすめします。

 

低層住宅に住んでいる

水は、言うまでもなく高いところから低い方へと流れます。

周囲よりも低い土地にある建物はもちろん、一戸建てやマンションの低層階は、水災リスクが高いといえます。

また、木造住宅は土砂崩れや洪水に巻き込まれたときに、建物ごと押し流されてしまう危険性も…。

戸建て住宅の保険料負担がマンションよりも高く設定されているのは、こうした災害リスクが大きいからにほかなりません。

マンションの高層階や高台以外に住むときは、水災補償をつけたほうが安心できるといえるでしょう。

 

ハザードマップでリスクの高い地域に住んでいる

自治体や国が発行しているハザードマップは、水災リスクの重要な指標となります。

ハザードマップをチェックし、居住地域の「洪水」「土砂災害」「高潮」のリスクが高いときは水災補償をつけることをおすすめします。

また、都市部や市街地でも「内水(ないすい)リスク」の高い地域もあるので注意が必要です。

内水とは、ゲリラ豪雨や台風によって下水道処理が追いつかなくなってしまい、マンホールから水が吹き出したりあふれたりする現象のこと。

下水道管の多く集まっている地域や、くぼんだ場所などは、この内水氾濫のリスクに備える必要があるのです。

「河川から遠いから大丈夫」と安心せずに、一度ハザードマップを確認し、浸水区域や浸水の深さを把握したうえで、水災補償をつけるかどうかを判断するようにしましょう。

 

 

まとめ

火災保険とセットで加入することができる水災補償。

保険料の負担を減らすために、水災補償をはずしてしまう人も少なくありません。

しかし近年は、集中豪雨や大型台風などによって、家が流されたり床上浸水したりする被害が多発しています。

ニュースでの災害映像も記憶に新しいかもしれません。

水災補償に入るべきか悩んだら、まずはお住まいの地域のハザードマップをチェックし、水災リスクに応じて加入を検討しましょう。

保険は、最悪の状況になったときの助け舟です。

いざというとき大切な家と家族を守るために、じっくり検討してみてくださいね。