住宅購入や車の購入など、大きな買い物をする時に必要な『手付金』。
「購入を決めた時に払うお金」だと認識している人が多い手付金ですが、手付金の種類やルール、支払うタイミングまで理解している人は多くありません。
今回は、『手付金』とは何か、種類や特徴、注意点など、手付金について詳しくご説明します。
『手付金』のことを「あまり分かっていないな」と思う方は、ぜひ読んでみてくださいね。
嵯峨根 拓未(株式会社ドレメ 取締役(現場責任者))
資格:一級建築士、宅地建物取引士
戸建て住宅、ヴィラ、グランピング等幅広い物件の現場を経験。
実際の経験を基に、あなたのおうちの悩みを解決します
手付金とは?
土地や建物などの売買契約をするとき、買主が売主へ支払うお金を手付金と呼びます。
また、手付金は支払総額の一部を現金で支払うのが一般的です。
手付金が必要な最大の理由は、簡単に契約をキャンセルさせないため。
手付金は、契約を締結したあと、商品の引き渡しと代金の支払いが行われ、契約が成立するまでの間、法的関係を保つ役割を担っています。
また、売買契約がどちらかの都合で解除になってしまった場合の損害賠償や違約金という意味合いもあります。
手付金が売主へ支払われたあと、契約がキャンセルになった場合のほとんどは以下の金額が支払われます。
⇨手付金の放棄を行い、売主に手付金を支払う
⇨受け取った手付金の倍の金額を買主に支払う
手付金の種類とは?
手付金には、意味と役割の異なる3つの種類があります。
大きな買い物をする時には、自分が支払う手付金がどの種類に該当するのかを理解しておくと安心です。
理解してしまえば難しいことではないので、覚えておくようにしましょう。
解約手付
『解約手付』の場合、解約権(解約を申し出る権利)を売主、買主それぞれ当事者が持つことができます。
つまり、解約手付として手付金の授受が行われた場合は、契約が交わされた後であっても、売主か買主どちらかの意思だけで契約の解除が可能になります。
買主側から申し出た場合、手付金を放棄し、売主側は手付金の倍額を買主に返すことで、損害賠償を負うことなく契約を解除できます。
違約手付
『違約手付』とは、契約成立後に買主、売主のどちらかに違約(契約違反)があった場合、損害賠償とは別に手付金を没収することができる手付。
買主側に違約があった場合、手付金は没収されてしまいます。
しかし売主側に違約があった場合は、手付金を返したうえで、違約金として手付金と同額を買主へ支払わなければなりません。
多くの売買契約書では、この違約手付が用いられています。
証約手付
売買契約の成立を証明するという意味の手付が『証約手付』。
買主から支払われた手付け金に、売買契約の成立を明確に表す証拠となるものです。
不動産売買契約での手付金とは?
ここまで手付のそれぞれの性質を見てきましたが、不動産の購入に必要となる不動産売買契約における手付は、多くが『解約手付』となります。
次は、不動産取引において契約解除を行う場合は、どのような決まりや注意点があるのかを確認していきましょう。
契約解除をする場合
不動産売買契約を解除する場合、お互いに書面で通知をすることが必要です。
契約解除をすること自体はどのような理由であっても可能です。
しかし前述したように、買主からの申し出の場合は手付金を放棄する必要があり売主からの申し出の場合には、買主に手付金の倍額を支払わなければなりません。
不動産売買契約は、契約日から「手付解除期日」または「契約の履行に着手するまで」が契約解除が可能な期日。
履行とは、「契約を実際に行うこと」を意味し、売主である不動産業者が移転登記の準備や工事を始めたタイミングのことを指します。
しかし、そのタイミングは不明確なため、一般的には具体的な手付解除日を双方合意のうえで取り決めることとなっています。
住宅ローン特約での契約解除の場合
不動産売買契約のほとんどは、買主が住宅ローンを利用して購入するパターン。
そういった住宅ローンの利用が前提とされている不動産売買では、不動産売買契約書に『住宅ローンの融資利用特約』を設定するのが一般的です。
特約の内容は『住宅ローンの審査に落ちてしまい、借り入れができなかった場合、違約金を支払うことなく売買契約を解除できる』というもの。手付金も、売主から買主へ全額返金されます。
このように住宅ローンの融資利用特約は、主に買主側が守られるものです。
しかし、どんな状況でもこの特約が有効になるわけではありません。
住宅ローン契約の申し込み書類に不備があったり、融資を申し込まなかったりした場合は、特約の対象外となります。借り入れを拒否した場合も同様です。
基本的に、買主に責任がある場合は特約の対象外となり、通常の契約解除となってしまうので注意しましょう。
手付金の相場とは?
では、実際に不動産売買契約の手付金はどのくらいになるのかを見ていきましょう。
相場は売買額の5~10%
不動産売買契約は、ほとんどが数千万円以上という高額な契約。
前述したように、当事者同士に解約する権利があったとしても、簡単に解約できないようにするため、手付金は低すぎず高すぎない金額が設定されます。
一般的に、手付金の相場は売買額の5〜10%程度に設定されることが多くなっています。
手付金に上限が設けられる場合もある
売主が不動産会社の場合は、宅地建物取引業法によって、手付金は売買金額の20%以内にすることと定められています。
つまり、売主は総額の20%を超える金額を手付金として受け取ってはいけないということになります。
これは、買主が法外な金額を請求されてしまうことを防ぐためのルール。
仮に20%を超える手付金を支払ったとしても、20%以上の部分は手付金として扱われなくなります。
保全措置
売主が不動産会社であり、手付金や中間金の合計が一定額を上回る場合、不動産会社は買主に対して返金の保証をしなければならないという決まりがあります。
例えば、売主の不動産会社が契約中に倒産してしまい、契約の履行も賠償金の支払いもできない場合、買主側ばかりが損をしてしまいますよね。
こうしたことを防ぐためにも、売主側は買主に返金といった保証ができるよう、銀行や保証会社、保険会社などと事前に保険契約をする必要があります。
これを保全措置と呼びます。
保証の対象になる金額は以下の通り。
未完成物件 | 売買代金の5%または1,000万円を上回る金額の場合 |
完成物件 | 売買代金の10%または1,000万円を上回る金額の場合 |
まとめ
頭金や着手金というイメージで不動産購入時に支払っていた『手付金』ですが、きちんと意味や役割があるものだということをご理解いただけたでしょうか。
手付金が発生する売買は、大きな金額のお買い物であることがほとんどです。
トラブル防止のため、契約書をしっかりと読み、手付金の種類はどういったものか、万が一、契約解除となった場合はどのように進めればいいのかなどをあらかじめ確認しておきましょう。