不動産売却をすると、さまざまな税金がかかります。
せっかく高く売れたのに、支払う税金が多すぎて手元に残るお金が少なくなってしまうのは嫌ですよね!
- 不動産売却にかかる税金が高い・・・
- なるべく節税したい!
- 豊かな新生活を楽しみたい!
不動産の売却価格やタイミングによっては、利益の40%の税金を支払うこともあります。
しかし控除や特例もたくさんあり、上手に使うことができれば大きな節税効果が得られるんです!
そこでこの記事では、不動産売却にかかる税金とその節税対策をご紹介します。
知っていれば得するものばかりなので、ぜひ最後までお読みください!
不動産売却にかかる税金と節税対策【一覧表】
不動産売却には、大きく分けて3つの税金がかかります。
- 紙税
- 登録免許税
- 譲渡所得税
それぞれの節税対策は、以下の一覧表をご確認ください。
印紙税 | 売買契約書をコピーする |
登録免許税 | 抵当権抹消登記、住所変更登記を自分で行う |
譲渡所得税 | 確定申告で減税特例を適用する |
印紙税の節税対策
印紙税とは、売買契約書に貼る収入印紙です。
高額かつ重要な取引をするための文書を「課税文書」といい、課税文書として指定されている契約書には、収入印紙を貼って税金を納めなければなりません。
印紙税の金額はいくら?
印紙税の金額は、文書の種類や取引価格によって異なります。
売買契約書の印紙税額は、以下のとおりです。
契約金額 | 印紙税 |
50万円を超え100万円以下 | 1千円 |
100万円を超え500万円以下 | 2千円 |
500万円を超え1千万円以下 | 1万円 |
1千万円を超え5千万円以下 | 2万円 |
5千万円を超え1億円以下 | 6万円 |
1億円を超え5億円以下 | 10万円 |
※令和4年3月31日までは軽減措置として上記の半額程度になります
通常は、不動産会社が売買契約書を2通作成し、売主と買主のそれぞれが収入印紙を貼ります。
【節税対策】売買契約書をコピーする
印紙税は、文書の原本に課税されるものです。つまり、コピーの場合は非課税なんです。
そこで売買契約書は1通だけ作成し、売主はコピーを保管することで印紙税が非課税になります。
買主は、購入時の住宅ローンを組むために原本が必要ですが、売主は売却後に原本が必要になる場面はありません。
そのため「記載内容さえ分かれば良い」という場合はコピーで十分なんです。
売主が何も言わないと不動産会社はいつもどおり契約書を2通作成してしまうので、あらかじめ「自分の分はコピーで構わない」と担当者に伝えてください。
コピーでも大丈夫なの?
「契約書をコピーって大丈夫なの?」と心配される方も多いのですが、売買契約書としての効力は原本もコピーも同じです。
ただ一つだけリスクがあるとすれば、買主が契約書を改ざんして原本とコピーの内容が異なってしまった場合、裁判の証拠としては原本が有利になる点です。
しかし、文書改ざん自体がそもそも犯罪なので、そのようなリスクは極めて低いといえるでしょう。
登録免許税の節税対策
登録免許税とは、不動産登記をする際に法務局に支払う税金です。
手続きを司法書士に依頼する場合は、ひとつの手続きにつき司法書士報酬が別途かかります。
登録免許税の金額はいくら?
不動産登記にかかる登録免許税は、土地・建物1件につき1,000円、司法書士報酬は1~2万円です。
- 戸建てやマンションの場合
土地1,000円+建物1,000円+司法書士報酬1~2万円 - 土地のみの場合
土地1,000円+司法書士報酬1~2万円
ローン完済時の抵当権抹消登記や、住所変更登記にかかる費用は売主が負担します。
所有権移転登記の費用のみ、買主が負担します。
【節税対策】抵当権抹消登記、住所変更登記を自分で行う
登記をする際の登録免許税(1,000~2,000円)は、必ず法務局に支払わなければなりません。
ではどこで節税するかというと、登記の手続きを自分で行い、司法書士報酬を節約します。
抵当権抹消登記、住所変更登記はどちらも比較的簡単にできる手続きなので、お時間があればご自分で手続きするのがおすすめです。
法務局に必要書類を提出すれば、数日~2週間ほどで登記が完了します。
抵当権抹消登記の必要書類
- 抵当権解除証書または弁済証書
- 抵当権設定契約証書(登記済証)
- 代表者事項証明書または登記事項証明書
- 委任状
- 抵当権抹消登記申請書
住所変更登記の必要書類
- 住民票または戸籍附票
- 収入印紙(登録免許税)
- 登記事項証明書
- 住所変更登記申請書
自分で登記できないケースもある
引き渡しギリギリまで売主が居住していて、売却代金でローンを全額返済し、買主に引き渡すケースもありますよね。
その場合は
- 抵当権抹消登記
- 住所変更登記
- 所有権移転登記
これらの登記を、司法書士がまとめて行う「同時抹消」が基本となります。
契約の期日までに、確実に所有権移転しなければならないため、素人がおこなって間違いがあると大変です。
「登記をするのは手続きに慣れた司法書士のみ」と定めている不動産会社もあります。
ご自分で手続きしたくても不動産会社が許可しないこともあるので、あらかじめ担当者に確認しておくことをおすすめします。
引っ越しをすると、不動産の住所変更登記が必要になります。 司法書士に依頼したほうがいい? なんだか難しそう… 手間がかかるんじゃないの? 不動産登記は、ほとんどの方が慣れていないので、司法書士に依頼する方も多いと[…]
譲渡所得税の節税対策
譲渡所得税とは、売却益に応じて支払う税金です。
給与所得と別に計算するので、不動産売却をした年だけは個人的に確定申告をしなければなりません。
譲渡所得税の金額はいくら?
譲渡所得の計算式は、以下のとおりです。
譲渡所得の計算式
- 売却価格=いくらで売ったか?
- 取得費=いくらで買ったか?(その家の購入価格と、購入時にかかった諸費用の合計)
- 譲渡費用=いくら経費がかかったか?(売却でかかった諸費用の合計)
ポイントは、売却価格=譲渡所得ではないことです。
購入価格や売却にかかった経費をすべて差し引いた、純粋な利益だけを譲渡所得として計上します。
税率は以下のとおりです。
【例】
譲渡所得:500万円
所有期間:6年⇒長期譲渡所得20%
500万円×20%=100万円
この例では、支払う税金は100万円になります。
【節税対策】確定申告で減税特例を使う
譲渡所得税は、確定申告をして特例を適用することで節税できます。
マイホームや相続した空き家を売ったときに使える特別控除は6つです。
- マイホームの3,000万円特別控除
- 空き家の3,000万円特別控除
- 10年超所有の軽減税率
- 買換え特例
- マイホーム買換えの譲渡損失の損益通算及び繰越控除
- 特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除
どのくらい節税できるのか、それぞれ説明します。
マイホームの3,000万円特別控除
もっとも節税効果が大きいのは、譲渡所得3,000万円までなら非課税になる「3,000万円特別控除」です。
この特例を適用すると、譲渡所得の計算式からさらに3,000万円を差し引くことができます。
3,000万円特別控除適用の計算式
一般のマイホームであれば、よほど土地が高騰しないかぎり購入価格より高く売れるケースはほぼありません。
もし高く売れても、3,000万円以上の利益が出ることは稀ですよね。
つまりこの特例があることで、マイホームを売ったほとんどの人は譲渡所得税が免除になっています。
3,000万円特別控除の主な適用要件は、以下のとおりです。
自分の居住用として使用していたこと
- 居住しなくなってから3年以内に売却すること
- 買主が親族などの特別な関係ではないこと
参照:国税庁ホームページ
住宅ローン控除との併用はできない
マイホームの3,000万円特別控除は、住宅ローン控除と併用できません。
節税できる譲渡所得税の金額と、住宅ローン控除の金額(最大500万円)を比較して、あなたにとって有利な方を選んでくださいね。
空き家の3,000万円特別控除
相続した空き家を売ったときは、「空き家の3,000万円特別控除」が使えます。
マイホームの3,000万円特別控除と同じように、譲渡所得の計算で3,000万円を差し引けるので、売却益3,000万円までは非課税となります。
空き家の3,000万円特別控除の主な適用要件は、以下のとおり。
- 被相続人が1人で居住していたこと
- 相続してから3年以内に売却すること
- 買主は親族など特別な関係ではないこと
- 昭和56年5月31日以前に建築された建物(マンション不可)であること
- 耐震リフォームまたは解体をしていること
- 平成28年4月1日から令和5年12月31日までの間に売却すること
参照:国税庁ホームページ
10年超所有の軽減税率
不動産の所有期間が10年を超えている場合は、税率がさらに軽減されます。
税率14%まで下がり、通常の6%の節税効果が得られます。
主な適用要件は以下のとおりです。
- 売った年の1月1日時点で所有期間が10年を超えていること
- 自分の居住用として使用していたこと
- 居住しなくなってから3年以内に売却すること
参照:国税庁ホームページ
さらに、10年超所有の軽減税率とマイホームの3,000万円特別控除は併用可能です。
売却益から3,000万円を差し引いても譲渡所得がプラスになるときは、2つの特例をセットで申請してください!
買換え特例
マイホームを買い替えた際、譲渡所得がプラスでも売却価格よりも新居の方が高いケースもありますよね。
そうすると、ローンの完済・新居費用ですべて使ってしまうので、納税が厳しくなります。
そこで、その年に納めるべき税金を将来に繰り越せるのが「買換え特例」です。
たとえば9,000万円の新居を買ったとします。
売却代金6,000万円はすべて使ってしまい、3,000万円分の譲渡所得税の支払いが難しくなります。
そこで、買換え特例を適用させることで、今回は譲渡所得が0円ということにするのです。
買換え特例の主な適用要件は、以下のとおり。
- 自分の居住用として使用していたこと
- 居住しなくなってから3年以内に売却すること
- 居住期間が10年以上であること
参照:国税庁ホームページ
売却直後の負担は減りますが、納税自体が免税されるわけではないので注意!
今後のライフプランを考えた上で、適用するかどうかを決めることをおすすめします。
マイホーム買換えの譲渡損失の損益通算及び繰越控除
先ほどお伝えしたとおり、よほど高値で売れない限り、譲渡所得はマイナスになることがほとんどです。
そこで覚えていただきたいのが「損益通算と繰越控除」です。
損益通算と繰越控除とは、譲渡損失分を給与から控除し、税金を還付できる特例です。
本来は、不動産売却の所得は給与と別に計算されますが、この特例を適用すると給与所得と譲渡損失を合算(損益通算)できるようになります。
つまり、住民税が安くなり源泉徴収税が戻ってくるということ。
さらに、譲渡損失額が年間給与額を上回るときは、最大3年間繰り越して控除(繰越控除)することもできます。
【例】
年間所得:500万円
譲渡損失:1,800万円
売却年 | 500万-1,800万=▲1,300万 | 課税なし |
1年目 | 500万-1,300万=▲800万 | 課税なし |
2年目 | 500万-800万=▲300万 | 課税なし |
3年目 | 500万-300万=200万 | 200万に課税 |
主な適用要件は以下のとおりです。
- 自分の居住用として使用していたこと
- 居住しなくなってから3年以内に売却すること
- 新居の床面積が50㎡以上であること
参照:国税庁ホームページ
特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除
こちらも譲渡損失が出たときに使える特例です。
先ほどの「マイホーム買換えの譲渡損失の損益通算及び繰越控除」と仕組みはほぼ同じですが、こちらは住宅ローンが10年以上残っている状態で家を売ったとき専用の特例です。
特例の主な適用要件は以下のとおりです。
- 自分の居住用として使用していたこと
- 居住しなくなってから3年以内に売却すること
- 売却価格が住宅ローン残高を下回っていること
参照:国税庁ホームページ
確定申告しないと節税できない
譲渡所得がマイナスなら、確定申告の義務はありません。
しかし「譲渡損失の損益通算及び繰越控除」を使うなら、損失がいくらだったかを証明しなければならないため確定申告が必要です。
手間はかかりますが大きな節税になるので、自主的に確定申告することをおすすめします。
相続不動産の節税対策
相続不動産を売却すると、相続税と譲渡所得税を支払うことになります。
2つの税金が一気に課税されるので、負担を減らせる減税特例があります。
相続税の金額はいくら?
相続税は、まず相続額から基礎控除を差し引きます。
3,000万円+600万円×法定相続人の数
取得額に応じた税率は以下のとおりです。
【相続税率の速算表】
区分 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | ― |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
【節税対策】取得費加算の特例を適用させる
取得費加算の特例とは、相続税の一部を譲渡所得計算の「取得費」に含められるというものです。
取得費は譲渡所得を計算するうえでの経費にあたるので、差し引く経費が増えることになります。
つまり、純粋な利益=譲渡所得は少なくなり、それにともなって税金が安くなります。
参照:国税庁ホームページ
取得費に加算できる相続税の計算方法
取得費に含められる金額は、以下の計算式で求めます。
- 相続税の納税額=支払った相続税の金額
- 不動産の相続税評価額=相続した不動産の評価額
- 全ての課税対象額=今回の相続で受け取った現金や不動産などの資産総額
亡くなった方に借金があったときは、資産総額から負債を差し引きます。
【例】
相続税 1,220万円
不動産評価額 6,000万円
資産総額 1億円(負債・葬式代含む)
1,220万円×6,000万円÷1億円=732万円
この例では、取得費に加算できるのは732万円です。
譲渡所得が732万円減れば、税率20%の場合は約150万円、税率40%の場合は約300万円もの節税になります。
この特例は知っておかないと損です!
まとめ
不動産売却はいかに高く売るかに注目されがちですが、あわせて節税対策も行うことで手元に残る金額を増やすことができます。
不動産売却時の節税対策は、以下のとおりです。
- 印紙税…売買契約書をコピーで代用する
- 登記費用(司法書士報酬)…抵当権抹消登記・住所変更登記を自分で行う
- 譲渡所得税…確定申告で減税特例を適用する
- 相続した不動産の売却…確定申告で取得費加算の特例を適用する
確定申告で使える特例は、自己申告した人だけが節税できる仕組みになっています。
あなたが損をしないためにも特例について知って、上手に節税してください!
節税したお金で新居を豪華にしたり、美味しいものを食べたり、余裕のある新生活を楽しんでください!