賃貸VSマイホームは、永遠のテーマのひとつです。
「家賃がもったいないから家を買うべきだ」という意見と、「家賃がもったいないとか言って家を購入するバカって頭悪いよね」という意見。
「家賃がもったいないとか言って家を購入するバカって頭悪いよね」というパワーワードの背景が出てきたのには、どういった理由があるのでしょうか?
そして、この記事では「一生賃貸暮らし」「持ち家」のどちらが長い目でみたときに幸せなのか?という観点で検証します。
これからの人生設計やマイホーム購入の参考にしてみてくださいね。
嵯峨根 拓未(株式会社ドレメ 取締役(現場責任者))
資格:一級建築士、宅地建物取引士
戸建て住宅、ヴィラ、グランピング等幅広い物件の現場を経験。
実際の経験を基に、あなたのおうちの悩みを解決します
「家賃がもったいないとか言って家を購入するバカって頭悪いよね」と言われる理由とは?
「一生賃貸派」になった理由が、影響力のあるインフルエンサーの発言を聞いて、という人も多いです。
ひろゆき氏の「家を買うな」という発言
ネット上の掲示板2ちゃんねる(現5ちゃんねる)の創設者で「論破王」のひろゆき氏は、「家を買うな」という発言で多くの人々に衝撃を与えました。
2023年の11月には、SNS上で持ち家について「庶民向けのものは価値が上がることがほとんどない」と綴り、話題になりました。
ひろゆき氏の意見としては「購入後に価値の上がるの資産価値の高い持ち家は、一般人向けには出回らず、購入は不可能」とのこと。
また、Youtube上での「家を買うべきか?」という質問に「若く働いているうちには家は買うな、貯金して、終の住処を買う」とも答えています。
「マイホームは負債」という記載がされた有名書籍がある
ロバート・キヨサキの著書『金持ち父さん貧乏父さん』は、投資用の不動産の購入を勧めながらも、マイホームは負債だと主張しています。
キヨサキ氏は、持ち家は収益用の不動産と違い、お金を生み出すものではなく毎月のローン支払いや維持費でお金が出ていくため、資産ではなく負債とみなすべきだというものです。
また、キヨサキ氏は長期間にわたるローン返済が経済的な自由を奪い、他の投資機会を逃す可能性があると警告しています。
マネー・投資系インフルエンサー両学長の語る「自分は一生賃貸派」
Youtubeで資産運用やお金の教育に関する情報の発信をしている、インフルエンサーの両学長。
両学長も、ひろゆき氏と同様に、「一般人が資産価値のある不動産を購入するのはとても難しいこと」という意図の内容を発信しています。
自身が一生賃貸派としながらも、「持ち家の方が、日々の生活で心が豊になるのならそちらを選べばいい」という内容も述べていました。
つまり、「投資や資産として」と「心の豊かさとして」を切り分けて考え、どちらが自分自身が幸せかという選択をしよう、ということですね。
少子高齢化による空き家の増加による資産価値の下落傾向
日本では少子高齢化が進行しており、総務省の統計によると、空き家率は年々上昇中。
これは不動産市場に大きな影響があります。空き家の増加により、供給過剰となった不動産市場では、家の価値が下落します。
特に、地方の過疎化も不動産価値の下降を加速させています。地方の不動産市場は、多くの若者が都市部に移住することによって需要の減少が著しく、さらに空き家が増える一方です。
地方の不動産価値はこれからさらに大きく下がるリスクは高く、将来的に家を売却する際に購入時の価格よりも大幅に低い価格でしか売れないばかりか、必要のない不動産を相続して負債になってしまう、という可能性も高っているといえるでしょう。
住宅ローンでマイホームを買うのは無駄?
「住宅ローン」というと聞こえはいいですが、ローン=借金。
若くしていきなり数千万円の借金をつくることに抵抗を感じてしまうのも無理ありませんよね。さらに住宅ローンには金利がもれなくついてくるので「金利が無駄」という人もいます。
しかしその一方で、一生家賃を支払いつづけても絶対に自分のものにはならないので「家賃が無駄」という考え方もあります。ではどちらが無駄でどちらが得なのか?
気になる生涯コストについて考えてみましょう。
生涯コスト比較【賃貸の家賃vsマイホームのローン】
賃貸とマイホーム、それぞれの生涯コストを比較してみると、以下のようになります。
賃貸の生涯コスト
◎家賃10万円の賃貸マンションに50年住む場合
月々の費用 10万円
- 家賃 月8万円
- 管理費 月1万円
- 駐車場 月1万円
その他の費用 340万円
- 敷金・礼金(計2ヵ月分)20万円
- 保証料 10万円
- 仲介手数料 10万円
- 更新手数料(25回分)250万円
- 火災保険(2年ごと2万円)50万円
10万円×12ヵ月×50年+340万円 = 生涯コスト6,340万円
マイホームの生涯コスト
◎3,000万円の家を35年ローンで購入し、50年住む場合
月々の費用 10万円
- ローン返済額(固定金利1.2%)月8万円
- 固定資産税(年12万円)月1万円
- メンテナンス代積立て 月1万円
その他の費用 600万円
- 頭金 300万円
- 仲介手数料 100万円
- 諸経費 100万円
- 火災保険(10年ごと20万円)100万円
10万円×12ヵ月×35年+600万円 = 生涯コスト4,800万円
計算すると、マイホームの生涯コストは約4800万円となります。
家を買ったほうが約1,500万円のプラスになるので、住宅ローンを組んで家を買うことは決して無駄ではないことがわかります。
変な話、コストだけで判断するなら、今後38年以上生きるのであればマイホームを買ったほうが得ということになりますね。
「200倍の法則」で見極めよう
そうはいっても、この先どのくらい生きるのか予想するのは難しいですし、寿命とコストを天秤にかけること自体そもそもナンセンスですよね。
そこで、もう少し簡単に比較できる「200倍の法則」をご紹介します。
「200倍の法則」とは、同等ランクの不動産価格と家賃を比較し、家賃の200倍以内の不動産であれば「買ったほうがお得」というもの。
たとえば家賃10万円のマンションの場合、10万円×200倍で2,000万円です。
つまり、同等ランクのマンションが2,000万円以下で売り出されていたら、その物件は「買い」ということですね。
【補足】
200倍という数字は、不動産投資の利回り6%の法則からきています。利回りとは、物件を購入して賃貸にしたときどのくらい利益が出るかを計算したもので「年間家賃÷購入価格×100」で求めます。確実に利益を出せる平均的な利回りが6%前後といわれていることから、それを応用して200倍の法則に使われています。
次に、賃貸のメリットを紹介していきます。
「家賃がもったいないからと言って家を購入するバカって頭悪いよね」に当てはまるのは全員ではない
「家賃がもったいないか」は人それぞれ
一生賃貸暮らしと持ち家の生涯コストがまったく同じだとしたら、どちらを選べばいいのでしょうか?
考えるべき重要なポイントは2つです。
- 老後の暮らしを重視するか?
- 現役時代の柔軟な暮らしを重視するか?
それぞれくわしく説明します。
持ち家を選ぶべき人の特徴
持ち家の場合、当然ですがその土地と建物は自分の資産になります。高齢になったときに住む場所を心配する必要がなく、住みなれた家で老後を送れるのは心の安定にもつながりますよね。
また、持ち家なら自由にリフォームができるので住み心地の良い部屋にすることもできます。
さらに将来的な資産価値まで考えて都市部の物件を購入しておけば、いざというときに高く売ることもできますし、子どもに資産を残せるメリットもあります。
そして万が一ローンの名義人が亡くなってしまった場合、団信と呼ばれる生命保険で住宅ローンがチャラになるので残されたご家族にとっても安心です。
しかし、マイホームを購入すると気軽に引っ越せなくなるのが難点。隣人トラブル、ライフスタイルの変化、立地など、住んでみてから「なんか違った…」というときでもなんとか折り合いをつけて生活していくしかありません。
またローンの金利や、老朽化したときのメンテナンス費用のことまで考えて、念入りな資金計画をたてなければなりません。
もし離婚をすることになったときは、持ち家の場合だと財産分与でもめる恐れもあります。
「持ち家」が向いている人
- 老後の住まいを残したい
- いずれ子どもに資産をゆずりたい
- 今後は引っ越しをする予定がない
- ペットを飼いたい
- 自由にリフォームしたい
このような方は、高齢になったときの不安が残ってしまう賃貸物件に住みつづけるよりも、マイホームを購入して1つの場所に根を張ったほうが幸せに暮らせるのではないでしょうか。
賃貸を選ぶべき人の特徴
柔軟性を求める人にとって、賃貸ほど身軽なものはありませんよね。
定期的なメンテナンスはしなくていいし、転職、子どもの進学、親の介護などで急に引っ越さなければならなくなったときも、より便利な立地へすぐに引っ越すことができます。
また万が一離婚することになっても、賃貸物件であれば財産分与でもめることもありません。
若いときは元気なので「一生賃貸で暮らす」といってもデメリットを感じることは少ないかもしれません。しかし高齢になったとき、そこには厳しい現実が待っています。
たとえば、60歳 70歳になってから他のマンションに引っ越したいと思っても、入居審査はガクッと通りにくくなります。
大家さんからしてみれば、仕事をしていない収入の少ない高齢者は家賃滞納の不安があること、ひとり暮らしであれば孤独死のリスクが大きいことなどから、できれば入居してほしくないからです。
このように、ガンガン稼いでいる現役世代なら問題にならなかったことが、会社を退職し「高齢者」になったときに浮き彫りになるのです。
ただ、すでに住んでいる人を「高齢者」という理由で追い出すことはもちろんできません。一般に、入居審査に通りにくくなる年齢は定年をすぎた65歳以降。
つまり一生賃貸で暮らすのであれば、定年をむかえる前に“終の棲家”となる築浅物件に引っ越しておくといった準備が必要です。
「一生賃貸」が向いている人
- 老後に住める家をきちんと確保できる
- 転勤が多く、住宅手当がある
- 引っ越すことにワクワクを感じる
- ご近所付き合いが苦手
- 定期的なメンテナンスが面倒
このような方は無理してマイホームを買うよりも、その時々に応じて柔軟に暮らしていける賃貸のほうが幸せといえるのではないでしょうか。
「家賃はもったいない論争」のまとめ
「家賃がもったいない」と感じるかどうかは、個人の価値観や目指していくライフスタイルに大きく関わります。
持ち家には資産形成や安定性のメリットがある一方で、賃貸には柔軟性やリスクの低さといった利点があります。自分のライフスタイルや将来の計画を考慮し、どちらが自分にとって最適かを判断することが重要です。
単純にコストで比較するなら、早いうちに家を買ったほうがお得ではあります。
ただ人生設計は人それぞれなので、コストばかりにとらわれず、あなたが重視するものは何か?を考えることが大切です。
一生賃貸暮らしのポイント
- 柔軟性があるので身軽
- 高齢になると入居審査に通りにくい
将来、高齢者用の施設に入るにしてもそれなりのお金がかかるので、そういったことも視野に入れて貯金しておくことも大切ですね。
持ち家のポイント
- 老後の住まいが安泰
- 気軽に引っ越しできない
マイホームを建てるときは、事前にしっかりとリサーチをして後悔のないようにしてください。
賃貸と持ち家、いずれにもメリットデメリットがあります。そしてお金は幸せになるためのツールです。「お金のために」と無理や我慢を重ねて不幸になってしまえば元も子もありません。
あなたと大切なご家族がずっと幸せに暮らすために、良い選択をしていただければと思います!
くれぐれも、マイホーム作りは慎重に…
「家を建てて満足していますか?」と調査したところ、なんと2人に1人が後悔しているという結果でした。 住宅ローンが大変で生活が苦しい 間取りや設備に失敗して家事が不便… 会社選びに失敗してアフターフォローが最悪! せっかく建てたの[…]