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傾斜地に新築するメリットデメリットやポイントを元大手ハウスメーカー営業マンが解説

 2022/05/06 新築
 

せっかく土地探しから家づくりをするなら「見晴らしがいいところに家を建てたい!」という人は多いのではないでしょうか?

人の目を気にせず友達とお庭でBBQパーティをしたい、お風呂あがりにバルコニーでまったりお酒を飲みたい、など夢が膨らみますよね。

でも、傾斜のある土地に家を建築することはリスクもあります。

そこでこの記事では、傾斜地に家を建てるメリットとデメリット、さらにリスクを回避するポイントを元大手ハウスメーカー営業マンの私が解説します!

 

傾斜地とは?

土地を検討するにあたって、まず傾斜地とは何かを知っておきましょう。

業者との打ち合わせは、法律や業界用語などの予備知識がある方がスムーズに進められますよ。

 

建築基準法とがけ条例での定義

傾斜地とは平坦ではないこう配のある、つまり、ななめに傾いた土地のことです。

建築基準法において傾斜のある土地は「がけ」と定義されており、がけ崩れなどによる被害を防止するための条文が法律で定められています。

また、地方自治体の建築基準条例においても「がけ条例」といわれる項目があります。

「がけ条例」では傾斜のある土地の定義が地方自治体によって異なるため、事前に確認が必要です。

例:がけ(こう配が30度をこえる傾斜地をいう。)
〈参考〉神奈川県建築基準条例の解説 第2条の3(災害危険区域内の建築物)

 

 

不動産業界での定義

不動産業界では一般的に、こう配のある土地のことを「がけ地」「法面(のりめん)」「傾斜地」などと使い分けがされています。 

 

がけ地

がけ地とは、急なこう配があり通常の建物が建てられない土地全般を指す言葉。

前述した通り、傾斜の土地の定義は地方自治体によって異なりますが、一般的には30度をこえる傾斜地をがけ地と呼ぶことが多いです。

 

法面(のりめん)

法面(のりめん)とは、土地の傾斜面のことで、宅地として利用できない土地の傾斜面を指します。

自然からなる傾斜もあれば、造成されて傾斜がついたものもあります。

 

傾斜地

傾斜地とは、「傾きのある土地」のこと。

明確な定義はなく、不動産業界以外にも広く使われている用語です。

 

傾斜地に家を建てるメリット

傾斜地の家は、ひと目を気にせず眺望を楽しめるという大きなメリットがあります。

それでは傾斜のある土地に家を建てるメリットを、詳しくお伝えしていきますね。

 

見晴らしのよさ

私はハウスメーカーに勤めていましたが、斜面のある敷地に一戸建てを依頼するお施主さまの多くは、建物からの見晴らしのよさを求めていました。

「ウッドデッキから山の自然を眺めたい」「海の見えるリビングにしたい」など、傾斜地建築ならではのご要望が多かったです。

斜面の分譲マンションにおいても「富士山が見える」「解放感のあるバルコニー」などは魅力的な物件になります。

あえて傾斜地に建築して、景色を眺めながらお料理を堪能できるレストランも素敵ですよね。

 

土地代が安価な傾向にある

傾斜のある土地は、平坦な土地や造成された宅地に比べて価格が安い傾向にあります。

別荘地を購入され永住するというお施主さまは「土地が広くて安い分、建物やインテリアにお金をかけられる」とおっしゃっていました。

実際にインテリアの充実した家づくりとなり、遠方でしたがお引き渡しの際には担当したインテリアコーディネーターと現場納品の立ち合いをしました。

お施主さまに喜んでいただけたのはもちろん、担当のインテリアコーディネーターが満足そうにカーテンを納品していたのがとても印象的でした。

 

高低差を活かした空間づくりができる

高低差のある敷地での建築は、通常より建物の基礎を高く設計します。

基礎部分はコンクリートになるので「半地下の収納スペース」「防音仕様のシアタールーム」「地下のおうちワインセラー」「ビルトインガレージ」なども可能です。

あえて1.5階などを設けて空間を縦に有効に活用できるスキップフロアを採用すれば「子どもがわくわくするプレイルーム」実現の夢もありますよね!

ちなみにスキップフロアは天井高1.4m以下であれば床面積に含まれません。

 

人目が気にならない

隣地よりも高い位置にある土地は、ひと目を気にせず生活することができます。

「リビングテラスでお酒を楽しむ」「朝日を眺めながらお風呂に入る」など他人の視線を感じることない空間が設計できるのも醍醐味。

お引き渡し前のオープンハウスで、脱衣室から外のバルコニーに行き来ができる空間デザイン事例も。

まるで露天風呂のお休み処のような素敵な空間を実現していましたよ! 

 

傾斜地に家を建てるデメリット

個性あふれる開放的な家づくりができる傾斜地ですが、その反面、傾斜のある土地に家を建てるデメリットもあります。

予想以上に建築コストがかかってしまい、「こんなはずじゃなかった!」とならないためにも、デメリットについてお伝えしていきます。

 

自然災害の被害リスクがある

傾斜地崩壊危険区域に指定されているエリアは、集中豪雨や台風、地震といった自然災害によって、がけが崩落する危険性が高まります

購入予定の土地の地方自治体が発行しているハザードマップの情報をよく確認しましょう。

また土砂災害警戒区域などの防災標識に、警戒エリアが部分的に表記されいている街もあります。

 

基礎費用が高額になる

傾斜地住宅の建築は、平坦な土地に比べて基礎の工事や使う材料が多くなるので、必然的に建築費用が高くなります。

基礎は建物を支える最も重要な部分であり、工事費用がかかる鉄筋コンクリートでできているためです。

例えば、一般的に2階建てより面積の大きい平屋の方が建築費用がかかるといわれているのは、基礎工事の量が増えることが原因です。

 

 

 

【傾斜地に家を建てる前に】リスク回避のためのポイント

傾斜のある土地に家を建てるメリットとデメリットをお伝えしました。

土地購入後の家づくり失敗を避けるために、最後にリスク回避について解説します。

見慣れない建築用語がつづきますが、傾斜地を購入するにあたっては重要なポイントになりますので、しっかり確認してくださいね。

 

地盤調査をする

敷地の傾斜や平坦にかかわらず、家を建てる前には地盤調査が必要になります。

地盤が弱ければ、いくら基礎がしっかりしていても、地盤沈下で家が傾いてしまうリスクがあるからです。

ハウスメーカーに勤めていたときも、地盤調査の結果によっては地盤改良の工事費用がかかる可能性があることは必ず説明していました。

 

擁壁(ようへき)をつくる

高低差がある土地は土砂崩れなどの崩壊を防ぐための擁壁(ようへき)工事をする必要があります。

擁壁:傾斜のある土の面が崩れるのを防ぐために構築される壁状の構造物

造成工事でコンクリートの擁壁が設置されている土地もありますが、擁壁がない土地は擁壁の造成代も工事費用に含めて建築を計画します。

古い擁壁がある場合は、水抜き穴があるか?強度に問題がないか?などを専門家に調査を依頼しましょう。

水抜き穴:水を外部に排出するための穴

 

がけ条例の規制内容を確認する

前述した通り、がけ崩れの被害を最小限にするために建築を制限する『がけ条例』は内容が地方自治体によって異なります。

例えば、「こう配30度をこえる傾斜地のがけ側に居室を設けることができない」などの規制があります。

要するに、がけ条例に当てはまる土地では、自由に間取りの設計ができません。

家づくりにおいて間取りの規制があるかないかは重要な情報であり、間取りによって建てたあとの住み心地にも大きく影響します。

 

危険区域外であることを確認する

傾斜のある土地を購入する前に、チェックすべき『危険な区域』を3つ説明します。

いずれも土地の検討段階で不動産業者に確認することが大切。

なお、宅地建物取引業法により、危険区域内の土地等の売買にあたっては法律の制限について重要事項説明をすることが義務付けられています。

 

急傾斜地崩壊危険区域

急傾斜地崩壊危険区域とは、崩壊する危険性のある急傾斜地やその隣接する土地を、一定の行為を制限する必要があるエリアとして都道府県知事が指定する区域です。

台風や集中豪雨などの災害によってに発生するがけ崩れの被害から、住民の生命を保護することが目的です。

 

宅地造成工事規制区域

宅地造成工事区域とは、宅地造成に伴って災害が発生するおそれが大きい市街地などで、宅地造成工事の規制が必要なエリアを都道府県知事が指定する区域です。

高低差のある敷地での家づくりは切土や盛土の造成工事が必要になることがあります。

切土・・・土を掘削して土地を削ること
盛土・・・土で埋めて土地を盛ること

 

地すべり防止区域

地すべり防止区域とは、地すべりによる被害を防ぐため、地すべりの発生を誘発するおそれのある一定の行為を制限したり、地すべり防止工事を行ったりする必要がある土地に指定される区域のこと。

なお地すべり防止区域内では、地すべりの発生を助長・誘発するおそれのある一定の行為については、都道府県知事の許可が必要です。

 

まとめ

いかがでしたか?

今回は傾斜地の土地を購入する前に知っておきたいメリットとデメリット、土地を購入する前に確認するポイントを、以前大手ハウスメーカーに勤めていた私の経験を交えてお伝えしました。

土地探しから始める家づくりのお手伝いもたくさん経験したなかで感じるのは、敷地条件は家づくりにおいて非常に重要なポイントだということ。

土地購入は不動産業者に依頼することになりますが、土地購入を検討している段階から建築設計事務所などの専門家に相談しましょう。

なぜなら傾斜地での建築は、土地代と建築費用のトータルで資金計画を立てる必要があるからです。

これから設計事務所を探して、ハウスメーカーや工務店と比較検討したいという方には、建築家相談依頼サービスの活用もおすすめですよ!

傾斜地の土地購入はリスクをしっかり回避して、この記事が失敗しないお家づくりの一助になりましたら幸いです。

 

 

 

 

 

 

 

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ライター紹介 ライター一覧

りすみ

りすみ

大手ハウスメーカー注文住宅セールス&大手水まわり製造メーカーの
元バリキャリウーマン兼インテリアコーディネーター。
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