家を建てる前に行う「地鎮祭」。
言葉を耳にしたことはあるものの、「何故行う必要があるのか」「何を行うのか」はっきりわからないという方も多いのではないでしょうか。
今回は、これから新築マイホームを購入する方へ向けて、地鎮祭の意味や進め方、どのくらい費用がかかるかなどを詳しくご説明します。
『地鎮祭』とは?
地鎮祭とは、その土地を護る氏神様を鎮め、土地を使用させてもらう許可を得る儀式です。
氏神様に許可を得ることで祟りを防ぎ、建築工事に関わる人たちの安全や、建てられた家に住む家族が末長く繁栄することを願います。
地鎮祭は、施主が土地を購入したあと、着工前の縁起のいい日に執り行うのが一般的です。
神式で行われるのがほとんどですが、仏教式やキリスト教式などで執り行うケースもあるようなので親族の宗派など確認しておくといいでしょう。
いまどき地鎮祭はやるべき?
地鎮祭は、義務ではないので必ず行わなければならないものではありません。
とはいえ、『工事の安全を祈願する儀式』という意味合いが強いため、基本的には行うことをおすすめします。
「スケジュールが合わせづらい」「手間やお金がかかるのでしたくない」「古い習慣なので必要ない」など考えはさまざまであり、地鎮祭は必要ないと判断すれば、施主が塩を撒くだけの簡易スタイルで済ませるのでもいいでしょう。
どちらにせよ、これから住む不動産なのですから何らかの儀式を設けることをおすすめします。
地鎮祭の開催は、施工会社が主催となって取り決めるので、「仏式で進行したい」「費用を抑えて略式で行いたい」「希望の日程がある」などの要望は、事前に施工会社やハウスメーカーの担当者に伝えておきましょう。
地鎮祭当日の流れ
地鎮祭は、予算や形式、地域によって流れや内容が変わることもありますが、一般的な神式の地鎮祭の当日の流れをご紹介します。
地鎮祭の祭場は、斎竹(いみたけ)と呼ばれる青竹を四方に建て、しめ縄を斎竹に張り巡らせた清浄な空間です。
祭場には、神様の降りてくる神籬(ひろもぎ)を建てた祭壇、儀式に使う盛砂などを準備します。
- 修祓(しゅうばつ)の儀
開会の儀です。神主が祭壇、土地、参列者をお祓いして清めます。 - 降神(こうしん)の儀
神主が神様を祭壇に招きます。 - 献饌(けんせん)の儀
祭壇に神饌(しんせん=供物)を差し上げます。 - 祝詞奏上(のりとそうじょう)
神主が祝詞(のりと=神に対して唱える言葉)を読み上げ、神様に安全祈願を行います。 - 清祓の儀(きよはらいのぎ)/ 切麻散米(きりぬささんまい)
切麻(きりぬさ =麻または紙を細かく切って混ぜたお祓い具)を土地の四方に撒き、払い清めます。 - 地鎮の儀(じちんのぎ)
盛られた砂の頂上に青草を挿し土地に見立てた「盛砂」を使い、施主・施工会社・設計者の三者が行う儀式です。
①刈初の儀(かりぞめのぎ):設計者が斎鎌(いみかま=儀式用の木製の鎌)を使って、刈る動作をしながら盛砂から青草を抜きます
②穿初の儀(うがちぞめのぎ):施主が斎鍬(いみくわ=儀式用の木製の鍬)を使って、盛砂を崩していきます。
③堀初の儀(ほりぞめのぎ):施工者が斎鋤(いみすき=儀式様の木製の鋤)を使って、盛砂をならしていきます。
その後、神主が鎮め物(しずめもの)を砂の中に納めます。 - 玉串奉奠(たまぐしほうてん)
参列者全員が玉串(たまぐし =神前に捧げる榊の枝)を神前に捧げ、二礼二拍手を行います。 - 撤饌(てっせん)の儀
お供えした神饌を下げます。 - 昇神(しょうしん)の儀
お招きした神様を見送り、お帰りいただきます。 - 直会の儀(なおらいのぎ)
お供えしたお神酒を盃に注ぎ、参列者全員で頂きます。
と、このような流れになります。地鎮祭にかかる時間は、開会から閉会まで約30〜40分程度です。
宗派や短縮版などで、要する時間も異なるので、気になる方は事前に確認しておきましょう。
地鎮祭の基本知識Q&A
地鎮祭は施工会社が取りまとめてくれるのが大半ですが、あまりに任せっきりにしてしまうと、思わぬトラブルを招くこと可能性があります。
当日に焦ってしまわないためにも事前に情報共有し、しっかり確認しておきましょう。
依頼はどこにしたらいいの?
本来、地鎮祭は施主が神職に依頼するものですが、最近は多くのハウスメーカーや工務店などの施工会社が代行してくれるケースがほとんどです。
そのため、地鎮祭を行うのであれば、施工会社の担当者へ伝えておけば問題ありません。
施工会社と打ち合わせの後に、土地の氏神様を祀っている神社へ依頼してもらいましょう。
人気の神社や日程は早い段階で予約が埋まってしまう可能性もあるので、早めに手配しましょう。
最適な日程は決まってるの?
地鎮祭の日程は、冠婚葬祭などと同じように、
大安や友引などの「六曜(ろくよう)」の吉日を選ぶケースと、建築吉日で利用される「十二直(じゅうにちょく)」という暦を使って日程を組み合わせるケースがあります。
一般的には六曜の
- 大安
- 先勝
- 友引
午前中に行うと良いといわれています。
一方、地鎮祭を避けた方が良いとされている日は、
- 建築の大凶日とされている「三隣忙(さんりんぼう)」
- 悪い結果を招くとされている「不成就日」
- 土の神様が土をいじられることを嫌がるとされている「土用」
です。
大安などの吉日でも不成就日と重なると、その効果が半減されるといわれています。
日程の候補が出たら、上記に被っていないかを一度調べ、避けられるようであれば避けましょう。
吉日に地鎮祭を執り行うことが理想ですが、その日に全員のスケジュールを合わせるのが難しい場合、施工会社の担当者と相談し、吉日にこだわりすぎず柔軟に調整することをおすすめします。
必要な費用は?
地鎮祭に必要な費用は一番気になるところですよね。
一般的に必要とされる費用について解説します。
神主に初穂料(玉串料)・お車代を渡す
神主へのお礼として、個人住宅の場合は3〜5万円の初穂料を支払います。
神主が自分の車で祭場まで来る場合には、別途お車代として、1万円前後を渡すのが一般的です。
初穂料を渡すタイミングは、施工会社が誘導してくれます。
地域によっては費用感や渡すタイミングが変わってくる場合もあるので、施工会社の担当者に事前に確認しておきましょう。
業者にお祝い・お礼を渡す
地鎮祭では神主への初穂料は必要ですが、施工会社へのお礼は必要ありません。
なぜなら、施工会社も施主と同様にお祈りしてもらう立場であるためです。
ここ数年では、ハウスメーカーや工務店などの施工会社へのお礼金や寸志などは無いのが通常となっています。
ただし、どうしても地鎮祭の手配や設営に対するお礼をしたいということであれば、1〜3万円が相場となります。
お金ではなく物で準備する場合は、菓子折りやビール・日本酒などのお酒を3〜5千円程度で購入しておきましょう。
棟梁や現場監督、職人にご祝儀を渡すケースがありますが、上棟式を行うのであればその時に渡すだけでも充分です。
お礼を準備する場合は事前に施工会社の担当者に一声かけておくとスムーズです。
のし袋の書き方は?
神式の場合のし袋の表書きは「御初穂料」もしくは「御玉串料」です。
どちらも神主さんへのお礼(お金)という意味があるため、どちらを書いても失礼に値することはありません。
ただし、地鎮祭においては「御初穂料」と書くのが一般的です。
仏式の場合は「お布施」になります。
地鎮祭ののし袋は、お祝い用(紅白の水引で蝶結びになっているもの)を選びましょう。
参加者の服装は?
地鎮祭は神事であるため、正装での出席が基本です。男女ともにスーツ、学生は制服を着用しておけば問題ありません。
最近では、戸建て住宅の地鎮祭の場合は、あまりこだわらない方も増えていますが、あまり派手な服装や帽子などは避けましょう。
また、地鎮祭のあとにご近所に挨拶回りをすることも考慮し、清潔感のある服装をおすすめします。
寒い季節や暑い季節に執り行われることも考えられるため、寒い日にはコートを、暑い時には風通しの良い服装を選ぶなど、体調を考慮することも大切です。
適切な挨拶は?
地鎮祭では、施主が司会進行をするようなことはありませんが、閉会時に施主からの挨拶を求められることがあります。
また、式の中で挨拶はなくても、直会でお酒や食事を振る舞う際に簡単な挨拶が必要になる場合があるため、準備しておくことをおすすめします。
- 地鎮祭への参加、準備に対する感謝
- 工事関係者への感謝と安全第一のお願い
また、地鎮祭が終わった後は、施工会社の担当者とご近所へ挨拶周りをします。
「御挨拶」の熨斗をつけた1,000〜3,000円程度の菓子折りや品物を持ってご挨拶に回りましょう。
お供物・お酒などは誰が準備するの?
地鎮祭を行うにあたって必要な設営資材や祭壇や神主さんの手配などは、施工会社が行ってくれるケースが多いです。
ただし、お供物については施主が準備します。
- 米
1合程度を洗い、一晩乾かしておきましょう。 - 奉献酒
日本酒(清酒)一瓶を準備しましょう。
購入時に地鎮祭用のお祝いとして、のし紙で包んでもらいましょう。 - 塩・水・酒
お供え物とは別に、お清めで使用するものです。それぞれ一合程度準備しましょう。 - 季節のお供えもの
地鎮祭を執り行う季節に合わせて、お供え物を用意しましょう。 - 海の幸
尾頭付きの魚、乾物(するめや昆布)など - 山の幸(果物)
桃、苺、林檎、ぶどう、みかん、柿など(2〜5種) - 野菜
地上にできるもの(キャベツ、きゅうりなど)
地下にできるもの(人参や芋など)(2〜5種)
直会の儀でお酒を飲むためのコップや盃、地鎮祭のあとに食事を振る舞うのであれば人数分用意しておかなければなりません。
儀式で使用する玉串(榊の枝)は、施工会社や神社が準備してくれるケースと、自分で準備するケースがあります。
行き違いが発生しないように、必ず事前に確認し、抜かりなく準備をしておきましょう。
まとめ
今回は地鎮祭について詳しく紹介しました。
地鎮祭の一番の目的は、「氏神様に安全祈願すること」です。
宗派によって儀式が変わったり、依頼する地域や神社によって決まり事や準備が違ったりすることもあるため、しっかり相談した後に開催することをおすすめします。まずは神主さん・ハウスメーカー・工務店などの施工会社に相談しましょう。
地鎮祭を開催した経験のある人に相談するのもありです。
地鎮祭を執り行うことで、工事関係者やご近所と交流でき、快適な家づくりができるきっかけになるでしょう。
そのためにも入念な事前準備は欠かせません。
少し面倒かもしれませんが、その土地に安心して末長く住むためにも、地鎮祭の開催を検討してみてはいかがでしょうか。