中庭のある家の間取りと種類を紹介!メリット&デメリットや注意点も解説
「中庭があるおしゃれな家に住んでみたい」
「他人の視線を気にせず庭でくつろぎたい」
家を建てるなら、中庭がある家にしてみたいと思う人もいるでしょう。
おしゃれなモデルハウスや建築雑誌を見ては夢が膨らみますよね。
しかし、実際に建てるとなると間取りや使い勝手の良さなどはイメージしにくいもの。
そこで今回、中庭がある家の魅力と実際に建てる時の注意点をまとめました。
漠然とした憧れが、より現実的で具体的なイメージができるようになりますよ。
中庭(パティオ)とは
中庭とは、建物の内側や壁に囲まれた庭で、屋根のついていない外と繋がった空間を指します。
中庭は、外と繋がってはいますが、外部から見えないような形状になっていることが特徴の一つです。
ヨーロッパ方面では中庭のある家は定番の様式で、『パティオ』や『コートハウス』とも呼ばれることがあります。
母屋と離れの間に設けた庭を中庭と呼ぶパターンもあれば、小さなサイズであれば『坪庭』と言われることも。
様々な建築様式がありますが、意味は同じだということを覚えておきましょう。
中庭のある家の間取りの種類
日本では、中庭を設ける際4.5畳~6畳が主流となっていますが、その中でも大きく分けて3つの型があります。
それぞれの特徴を見てみましょう。
ロの字型の間取り
一戸建ての中庭と聞くと一番に連想しやすいのが『ロの字型』。
家の中心部に庭を配置し、上空から見ると壁に囲まれている中庭です。
周辺環境により日当たりが悪い場合でも、ロの字型の中庭を設けることで、室内全体に採光を届けることができます。
また、外部からは中庭が完全に見えない設計となっているので、プライバシーの確保や防犯面に優れている反面、居住空間が圧迫されることもあり広い土地が必要となるでしょう。
壁で囲まれているため、湿気や熱がこもりやすい弱点もあります。
コの字型の間取り
庭を三方向から囲む形が『コの字型』。
ロの字型と違って、一部が開いているので開放感は感じやすいですね。
日当たりや風通しが良いので、庭木を植えたりガーデニングを楽しむことにも適しています。
ただし、完全に囲まれているわけではないので、プライベート空間として少し物足りなさを感じる場合もあります。
外からの視線が気になる場合は、対策として道路に面していない側に中庭を配置してみましょう。
L字型の間取り
上空から見た際、家の形がL字になって広い庭を設けられるのが『L字型』。
中庭の中で、最も建物と面している部分が少なく、開放的な空間を作ることができます。
中庭を広く確保してアウトドアや家庭菜園を楽しみたい人に適した型ともいえますね。
限られた土地でも居住空間を確保しつつ、中庭を設けることができるのは嬉しいポイント。
しかし、二方向しか壁で囲まれていないので、先に述べた2つのパターンに比べると、プライベート空間は確保しにくいでしょう。
中庭のある家のメリット
中庭のある家はメリットがたくさんあります。特に良かったポイントは以下の5つ。
詳しく見てみましょう。
自然光を取り込みやすくなり家が明るくなる
家の中心部に中庭を設けることで、採光が室内全体に届くようになります。
例えば、隣にマンションや3階建ての家が建ってしまった場合、建物同士の距離にもよりますが、1階の日当たりが悪くなってしまうことがあります。
中庭を設けることで、採光を確保でき、どの方角に面している部屋も明るく保つことができますよ。
また、窓の数を増やせば、通風も良くなるのは嬉しいですね。
防犯性・安全性が高い庭になる
一般的な一戸建ての庭に比べると、壁に囲まれた中庭は、防犯面・安全面は高いでしょう。
外からの視線を気にせず、庭で遊ぶことや洗濯物を干すこともでき、生活リズムや家族構成などが知られにくい点は防犯としても有効です。
その他、ロの字型なら子どもが道路に飛び出してしまう心配やどこかへ行ってしまう不安からも解消されます。
外遊びをさせながら、室内で家事や仕事をしていても安心できるのは中庭のメリットでしょう。
プライバシーが守られる庭になる
外からの視線を遮ることで、外の空気を感じながら自由な時間を過ごせます。
例えば、お風呂上りにビールを片手に月見を楽しむこともできれば、早朝にヨガを楽しむこともできます。
人目を気にしなくてよいからこそ、気ままに外の風を感じられる中庭はとっても贅沢な空間ともいえますね。
家の中でアウトドアや趣味が楽しめる
夏場なら家族水入らずでバーベキュー、週末はDIYやガーデニングなど充実した趣味の時間に興じるのもよいでしょう。
子どもと一緒にボディペインティングなど、アートな遊びにチャレンジしてみるのもおすすめです。
外からの視線を遮ることで、どんなに汚れても気にせず思いっきり楽しめますよ。
また、すぐに片づけなくても一目につかないのもメリットですね。
中庭でおしゃれな空間を演出できる
中庭の床と室内の床の高さを揃えて、フローリングと同じ色を使用することで、室内を広く開放的に見せることもできます。
他にも、白いタイルを敷き詰めて明るくオシャレな空間を演出したり、コンクリートで都会的な雰囲気を演出したりすることも可能。
室内のインテリアと合わせることで、より洗練された空間を作ることができますね。
家族とちょうどいい距離感で過ごせる
中庭のある家は、間取りに外の空間を挟むことになるため、家族とのあいだに適度な距離感が生まれます。
生活リズムの異なる二世帯住宅や、テレワークで集中したい時間帯がある、というご家庭にもピッタリ。
リビングや部屋がちょうどいい距離で保たれることにより、互いに穏やかでのんびりとした時間を過ごせるでしょう。
中庭のある家のデメリット
メリットの多い中庭のある家ですが、デメリットもあります。
詳しく見てみましょう。
建築・リノベーション費用、メンテナンス費用がかかる
中庭のない家に比べると、建築費・リフォーム費は高くなる傾向に。
通常よりも外壁を多く施工する必要があるだけでなく、特殊な外観やデザインはその分施工に手間や時間がかかってしまうからです。
他にも、水はけをよくするために給排水設備なども必須となるでしょう。
また、室内にしっかりと自然光を取り入れるためには、窓を多く設置する必要があります。
そのため窓ガラスやサッシの費用に加え、壁の補強をするメンテナンス費用も多く発生してしまいます。
高額な費用を要するからこそ、複数社に相見積もりをとって費用相場を把握することが大切です。
断熱性能が落ちやすい
窓が多く風通りが良い反面、断熱性能が落ちてしまう点はデメリットといえます。
冷暖房を通常より高めに設定することにより、光熱費が高くなってしまうのが悩みのタネですね。
例えば、断熱性能の高い窓ガラスやサッシに変えることで、気密性をあげ室内の温度を快適に保てます。
他にも、簡易的に取りいれるなら、窓ガラスに断熱フィルムを貼ることもおすすめです。
そうすることで、室内の空気を外に逃がさない工夫をしてみましょう。
節電やエコの観点からも効果的な方法です。
注文住宅を建てる際は、設計士に対策方法を相談してみましょう。
居住スペースが狭くなる
限られた敷地の中に庭を設けるので、居住スペースは狭くなりがち。
家族構成や必要な部屋数を考慮した上で、生活動線を遮らない間取りを工夫する必要があります。
例えば、水回りを一箇所に集めて、移動を少なくその場で完結できるように配置するといった方法も。
お風呂場、ランドリールーム、物干しの一連の流れをまとめることで、中庭を中心にぐるぐると回る必要がなくなります。
また、中庭で家族がくつろげるようにデッキを作って部屋の一つとして活用してみるのもいいですね。
設計前に家族としっかり話し合い、使い勝手のいい家を目指しましょう。
水はけが悪くなることもある
中庭は壁や塀に囲まれているため、一般的な庭よりも水はけが悪くなる傾向があります。
とくにロの字型の中庭の場合、集中豪雨や大雨のときに、行き場を失った雨水が中庭にどんどん溜まってしまうなんてことも。
水はけをよくするためには、雨水がきちんと外部へと流れていくように勾配をつけたり、排水パイプを太くしたりなど、排水設備をしっかり整えることが必須になります。
設計の段階で、雨水の排水場所をしっかり確保しておくようにしましょう。
前述したように、中庭のある家は費用がかさむ傾向にある理由はこうした設備を整える必要があるためなのです。
中庭のある家で後悔したエピソード&注意点
実は「中庭付きの家をつくったことを後悔している…」という人は少なくありません。
そこで、こちらの項目では中庭にまつわる後悔エピソードを紹介します。
中庭づくりを考えている方は、検討材料のひとつとして参考にしてみてください。
【後悔その1】土地が狭く理想の中庭が実現できなかった
多くの人が後悔してしまう理由のひとつとして、「せっかく土地を買ったのに、敷地が狭く思いどおりの中庭がつくれなかった…」ということが挙げられます。
とくに首都圏や政令指定都市のような人気エリアは土地の価格も高額なので、そもそも広い敷地を手に入れること自体が難しいケースもあります。
土地を手に入れたとしても、建ぺい率や容積率など、あらかじめクリアしておかなければならない問題もあるでしょう。
まずは理想の広さの中庭をつくれるかどうか、住宅会社や建築家とよく相談しておくことが大切です。
●理想の中庭が設計可能かチェック! ●庭を眺めることが目的なら、高級旅館のような小さな坪庭もあり |
【後悔その2】虫・湿気に悩まされる
「虫が寄ってくるから中庭に出たくない…」と後悔している人もいます。
中庭は屋根のない外部空間のため、自然と共存することが大前提です。
どの場所であっても自然と近い距離で生活ができる点はメリットでもありますが、裏を返せば自然の中で生活している虫も発生するということ。
中庭の窓を開けていれば、対策をしていたとしても虫の侵入は避けられません。
そのため「虫が苦手…」という方は、虫に悩まされることも珍しくないのです。
また壁に囲まれた中庭は湿気がこもりやすくなるため、水たまりがなかなか蒸発せず、蚊が発生しやすい環境になってしまうことも。
対策としては外壁に通風用のすきまをあらかじめつくっておき、湿気のこもりにくい環境を整えるのがおすすめです。
●排水設備を整備して、湿気対策を万全に! ●虫が寄ってきにくいハーブ系植物を育てる |
【後悔その3】お手入れに時間がかかってしまう
私たちが思うより自然の成長スピードははやいもの。
そんな中で「子育てや仕事が忙しくて、中庭のお手入れが大変…」という理由も中庭を作った方からよく聞く後悔です。
中庭でガーデニングをする場合、植栽だけでなく雑草もぐんぐん生えてきます。
雑草はこまめに抜かないと伸び放題になってしまい、ほかの植物に影響を与えてしまうこともあります。
雑草の除去は想像以上に大変で、そうした庭のお手入れには時間がかかるもの。
お手入れに時間をかけないためには、床仕上げを工夫し、手間のかからない中庭を目指すとよいでしょう。
●シンボルツリーはお手入れが楽な1本を厳選! ●床仕上げは『人工芝』『タイル』『ウッドデッキ』『 コンクリート』がおすすめ |
注文住宅で中庭がある家を建てるときのポイント
メリットやデメリット、後悔ポイントを知ったうえで、実際に建てるならどのような点に気を付けるべきでしょうか。
詳しく見てみましょう。
中庭の位置、窓のサイズを工夫する
中庭の種類が大きく分けて3パターンあるように、どのように活用したいのかで中庭の位置が変わります。
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家族のライフスタイルに合わせて、しっかりと話し合い検討しましょう。
また、窓の位置やサイズによっては、風通しが悪くなってしまう可能性も。
熱がこもりやすい中庭だからこそ、窓の位置やサイズは重要です。
設計の段階で、しっかりと相談し1年を通して住みやすい家づくりを目指しましょう。
庭の排水・排雪を確保する
壁に囲まれた中庭は、水はけが悪く湿気がこもりやすいです。
排水設備をしっかり計画しておかないと、カビや雑草で汚れてしまう原因に。
他にも、外から隔離された中庭は排雪するのも一苦労。
雪の多い地域なら、中庭はコの字型やL字型にして、雪寄せができるスペースを確保しましょう。
せっかく中庭を作ったのであれば、中庭のメリットが活かせるように事前の対策が重要ですね。
生活導線が不便にならないよう間取りに注意
ロの字型の中庭を配置した場合、家の中をぐるぐる回る必要があると日常生活が不便ですよね。
快適に過ごすためにも、間取りを工夫する必要があります。
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特に家事動線が悪いと、住みにくい家になってしまいます。
子どものいる家庭、高齢者がいる家庭、夫婦のみの家庭では、ライフスタイルも違えば必要な部屋数も違ってきます。
動線については、なかなか想定しにくいところもあるので、設計士やデザイナーの意見を参考に、中庭が生活の妨げにならないよう計画しましょう。
熱や湿気が溜まらないように注意
壁に囲まれた中庭は、空気がとどまりやすい特徴があります。
特に中庭に室外機を設置すると、熱や湿気が溜まりやすく注意が必要。
そのため、室外機が熱くなりすぎないように日よけカバーやすだれを設置することがおすすめです。
また、冬場は、室内と中庭との温度差で窓に結露が発生しやすく、黒カビの原因にも。
こまめに掃除するだけでなく、専門家による定期点検を依頼することで、快適な空間を維持できるでしょう。
注文住宅におすすめ!中庭のある家アイデア5選
新築注文住宅で中庭づくりをするときは、間取りやデザインが自由なだけに、どうしたらいいか悩んでしまいますよね。
そこで、注文住宅におすすめな中庭アイデアを5つ紹介します。
中庭での過ごし方をイメージしながら参考にしてみてくださいね!
白いタイルを敷き詰める
(出典:高砂建設 建築実例)
【中庭×白タイル】は相性抜群の組み合わせです。
白いタイルの床が光を反射して、部屋をより明るく照らしてくれるのです。
洗練されたおしゃれな雰囲気の中庭にしたい人におすすめです。
二階建てテラスで開放的にする
中庭から、二階のテラスへ直接上がれる階段をつくるのもおすすめです。
二階建てのタテ空間を活かすことで、より開放感のある中庭に仕上げることができるでしょう。
二階テラスから室内に出入りできるようにしておくことで、さらにテラスの使い勝手が良くなりますよ。
広さを活かしたラグジュアリーな中庭をつくりたい人におすすめです。
お手入れ楽チンなコンクリート
(出典:crie style 建築実例)
中庭のお手入れを楽にしたい!という人は、コンクリートの床仕上げがおすすめです。
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など、メリットの多い実用的な中庭になります。
ガレージと中庭をコンクリートでひと続きにつなげれば、男前な【ガレージハウス×中庭のある家】にすることもできるでしょう。
ウッドデッキでプラベートガーデン
(出典:ソラマド埼玉 建築実例)
中庭の定番といえばウッドデッキの床。
木は熱伝導率が低いため、真夏の日差しの下でも熱くなりすぎずに快適に過ごせるでしょう。
ウッドデッキとリビングの床の高さをそろえ、フローリングの色を統一すると、つながりのある広々とした空間に感じられますよ。
家族の集まるアウトドアリビングとしてBBQをしたり、犬を遊ばせたり、のんびり読書をしたりなど、くつろぎの【プライベートガーデン】になること間違いなしです。
省スペースは玄関ポーチに中庭
(出典:KLASIC 建築実例)
都心部にある狭小住宅地では、「土地が狭くて中庭をつくる場所がない…」と悩まれる方も少なくありません。
【玄関ポーチ兼中庭】は、そんな狭小住宅地にもおすすめの省スペースアイデア。
思いきって中庭とつなげてしまうことで、玄関ポーチを広々と見せられる効果があります。
さらに、
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など、メリットも多いのです。
ガーデンテーブルとチェアや小物を置いて”魅せる中庭”として装飾を施せば、リゾート感があふれるおしゃれな雰囲気に仕上がるはずですよ!
中庭のある家の実例写真
二階建てと平屋の実例を参考に比較してみましょう。
中庭付き平屋住宅
(出典:注文住宅ヘルプナビ 建築実例)
本体価格:約1,700万円。
延床面積:約29坪。
平屋にすることで耐震性が高いだけでなく、どの方角からでも採光をしっかりと確保できます。
中庭付き二階建て住宅
(出典:注文住宅ヘルプナビ 建築実例)
本体価格:約3,000~3,500万円。
延床面積:約38坪。
リビングと中庭の高さを統一することで、限られた空間でも広く感じられます。
まとめ
中庭の魅力と実際に建てる際の気をつけるポイントを解説しました。
中庭の種類は、大きく分けて3パターンあります。
- プライベートな空間が確保できるロの字型。
- 開放感とプライベート空間を両立したコの字型。
- 狭小住宅でも庭を確保できるL字型。
それぞれに特徴があり、どのようなライフスタイルを目指したいかによって選択肢が変わります。
中庭を設けることで、室内に自然光が取り込めたり、他人の視線を気にせず趣味やアウトドアを楽しんだりすることができますね。
しかしその反面、中庭のある家は費用が高額になりがちです。必ず複数社から相見積もりをとり、相場観を把握しましょう。
また、動線が悪いと暮らしにくい家になってしまう可能性も。
中庭がある家を建てる際は事前にこちらをチェックしましょう。
- 中庭の位置や窓のサイズは適切か
- 庭の排水・排雪の確保できているか
- 生活動線が不便ではないか
- 熱や湿気がこもらないか
中庭があることで自然と共有する空間が生まれ、開放感のあるおしゃれな家が叶います。
中庭を設けることで得られるメリットは多くあるからこそ、人気も高く憧れの的といえますね。せっかく家を建てるなら、憧れの住まいを手に入れてみてはいかがでしょう。
くれぐれも、マイホーム作りは慎重に…
この記事の監修:嵯峨根 拓未
所有資格:二級建築士、宅地建物取引士 |