家づくりに欠かせない建材のひとつである「断熱材」。
その名の通り、熱を断つ性能のある建材です。
「なぜ断熱材が必要なのか?」「どのような種類があるのか?」という基礎的な知識から、リフォームやDIYをしたいと思ったとき、ホームセンターでどのようなものを選べばよいのかを紹介します!
断熱材とは?家を保つ最強の役割
断熱材には、4つの役割があります。
マイホームに断熱材を用いる前にしっかり把握しておきましょう。
温度調節ができる
断熱材が入っていない住宅の場合、夏には熱気が、冬には冷気が住宅の中に充満します。
そうなると、冷房や暖房の効き目が悪くなり、家の中にも関わらず快適に過ごすことが難しくなります。
つまり、断熱材を入れないと、夏は暑く冬は寒い住宅になってしまうということです。
断熱材は外気温の影響を少なくし、住宅内の温度を保ち、快適な空間を作るという役割があります。
エアコン費用を抑えられる
断熱材の入っていない住宅は外気の影響を大きく受けてしまいます。
外気の影響を受けた部屋を快適な温度にするためには、冷暖房を強いパワーで長時間運転しなければいけません。
一方、断熱された住宅の部屋であれば、冷暖房の運転時間と消費電力を抑えることができます。
無駄に電力を消費しないということは、エコにも繋がり、電気代も抑えられ一石二鳥ですね!
結露が減少し、家が長持ちする
断熱材の大切な役割として、壁体内結露を防ぐというものがあります。
結露といえば、窓ガラスなどが濡れる「表面結露」をイメージしますが、実は条件が揃えば、壁と壁の隙間でも発生してしまう恐ろしいものなのです。
とくに木造住宅では、結露は家の構造になる木材を腐らせたり、カビを発生させたりする原因となり、家の寿命が短くなってしまいます。
断熱材を施工すると、結露の原因である湿気の侵入と寒暖差をなくして壁内を良い状態に保ち、家を長持ちさせることができるのです。
9種類の断熱材のメリットデメリットを比較
断熱材には細かい繊維の間に空気を閉じ込める「繊維系」、気泡を閉じ込める「発泡プラスチック系」があります。
また、断熱材は、種類によって外張り断熱と充填断熱という二つの工法を使い分けます。
- 外張り断熱工法
家の基礎や外壁、屋根などに断熱材を施工し建物の構造ごと覆う工法 - 充填断熱工法
壁や天井、床と外壁の間に断熱材を充填する工法
それぞれの断熱材はどちらの工法が使われるのか、9種類の断熱材とメリットデメリットを紹介します。
グラスウール
グラスウールは、繊維系の中でも「無機繊維系」の「鉱物繊維系」に属する断熱材で、充填断熱工法で使われます。
その名の通り、ガラスを細い繊維状に加工して作られています。
主に資源ゴミからできたリサイクルガラスが原料で、環境にも優しい素材です。
メリット
- 安価
- 燃えづらい
- 経年劣化しづらい
- 身体に優しい
- 吸音性に優れている
デメリット
- 水や湿気に弱い
- 施工に技術が必要
グラスウールは壁や天井、床にも施工が可能で、安価なため広く普及しています。
ガラスが原料なので、経年劣化しづらい上に防火性にも優れ、万が一燃えてしまっても有毒ガスを発生しません。
発がん性のリスクも低いと証明されており安心です。
グラスウールには吸湿性はなく、ガラス繊維の間に空気を含ませることで熱を伝えにくくしているため、水に濡れたり、湿気を含んだりすると、空気を含みづらくなり断熱性が失われてしまう恐れがあります。
効果を発揮し長持ちさせるためには、吸湿シートで覆ったり壁の中に隙間なくぴったりと詰め込んだりするなど、施工会社の技術が必要不可欠です。
ロックウール
ロックウールはグラスウールと同じく、繊維系の中でも「無機繊維系」の「鉱物繊維系」に分類され、こちらも充填断熱工法で使われます。
その原料は、天然の岩や鉱物、溶融スラグ(廃棄物や灰を高温で溶かし、冷やしたもの)です。
メリット
- 燃えづらい
- 吸音性に優れている
- コスパが良い
デメリット
- 水や湿気に弱い
- 脱落しやすい
- 施工に技術が必要
ロックウールのメリットは、グラスウールと同じく『燃えづらいこと』『吸音性に優れていること』が挙げられます。
グラスウールほど価格は安くないものの、その性能はグラスウールを上回ると言われています。
こちらも繊維系の断熱材なので、水や湿気に弱点です。
ただしロックウールは重量があるため、固定に技術がないと脱落(下の方へ固まってしまう)するケースがあります。
脱落すると断熱性が低くなるため、施工会社の技術が性能に大きく関わる素材だといえるでしょう。
セルロースファイバー
セルロースファイバーは、繊維系の中でも「天然繊維系」の「木質繊維系」に分類され、充填断熱工法で使用されます。
天然繊維系は自然系素材を繊維状に加工したものを指しますが、セルロースファイバーは天然繊維系のなかでも紙や段ボール、木材などの木質繊維系が原料です。
メリット
- 有害物質を含まない
- 防音に優れている
- 防火性に優れている
- 吸湿性に優れている
- 害虫を寄せ付けない
デメリット
- 価格が高い
- 施工に技術が必要
セルロースファイバーは、断熱性能だけではなく、防音性にも優れ、自然素材ならではの吸湿性で壁内部の結露やカビを予防することもできます。
防火性を高めるために配合したホウ酸の効果により、ゴキブリやシロアリなどの害虫を寄せ付けないというメリットもあります。
デメリットとしては、グラスウールに比べて価格が高いこと、専用機械や職人技が必要になることです。
ウールブレス
ウールブレスはその名の通り、羊毛が原料で、充填断熱工法で使われます。
羊毛には、身体に害の少ない防虫加工をかけてあります。
メリット
- 有害物質を含まない
- 防音に優れている
- 防火性に優れている
- 調湿性に優れている
- 害虫を寄せ付けない
デメリット
- 価格が割高
- 対応業者が少ない
- 施工に技術が必要
羊毛は、ガラスや木材などに比べて熱伝導率が低く、しっかりと断熱できます。
また、ウールの吸湿率は繊維の中でもずば抜けており、調湿性にも優れているため、壁の中での結露を防いで住宅が傷みません。
羊毛が原料のため、施工時も素手で触ることができるくらいに身体に優しいことがメリットです。
性能が優れているぶん、グラスウールに比べると、価格が割高になっていること、対応業者が少なく施工に技術が必要なことがデメリットといえるでしょう。
炭化コルク
その名の通り、ワインの瓶の栓に使用されている「コルク」が原料の断熱材で、外張り断熱工法、充填断熱工法どちらでも使われます。
ワインコルクを製造する過程で余った端材を圧縮加工して作られているので、とても環境に優しい断熱材です。
コルクを炭化させることで、もともと高い断熱性を強化します。
メリット
- 有害物質を含まない
- 防音に優れている
- 調湿性に優れている
- 腐食しづらい
- 害虫を寄せ付けない
デメリット
- 価格が割高
性能面はもちろんですが、環境に優しくエコな断熱材であることが最大の魅力です。
コルクは自身の樹脂成分によって自然と固まるため、化学物質が含まれた糊を使う必要がなく、役目を終えた炭化コルクは自然に還すことができます。
無添加住宅や天然素材住宅を建築している住宅業者が用いることが多い断熱材です。
ビーズ法ポリスチレンフォーム
ポリスチレンフォームは、石油系原料を発泡させ、気泡を閉じ込める「発泡プラスチック系」の断熱材です。
こちらも、外張り断熱工法、充填断熱工法の両方で使われます。
ビーズ状と押出し法の2種類があり、原料は同じですがその製造方法が異なります。
ビーズ状ポリスチレンフォームは、ビーズ状にした樹脂を発泡させたもので、梱包に使われる「発泡スチロール」と同じです。
メリット
- 水、湿気に強い
- 軽い
- ボード状で施工しやすい
- 形を変えやすい
デメリット
- 価格が割高
- 熱に弱い
ポリスチレンフォームは、水に強く軽量で施工しやすいことがメリットで、結露を防止効果が高いことも特長のひとつです。
ビーズ法ポリスチレンフォームはボード状だけでなく筒状などさまざまな形状に加工が可能です。
押出法ポリスチレンフォーム
押出法ポリスチレンフォームは、ビーズ法ポリスチレンフォームと同じ素材を発泡させながら押し出し、板状にしたものです。
こちらも、外張り断熱工法、充填断熱工法の両方が使われます。
ビーズ法よりもポリスチレンの粒が小さく詰まっているため、薄くても高い断熱性を発揮します。
施工会社によっては「スタイロフォーム」という商品名で取り扱われているケースもあるので同様商品と把握しておきましょう。
メリット
- 水、湿気に強い
- 軽い
- ボード状で施工しやすい
- 耐圧性に優れている
デメリット
- 価格が割高
- 熱に弱い
押出法ポリスチレンフォームは硬く耐圧性に優れています。
ポリスチレンフォームには難燃剤が含まれているものの、熱に弱い原料のため火災などが起きると高熱で収縮し、断熱性が失われてしまうことがあります。
硬質ウレタンフォーム
硬質ウレタンフォームも「発泡プラスチック系」の断熱材で、ポリウレタン樹脂に発泡剤を加えて作られます。
こちらも、外張り断熱工法、充填断熱工法の両方で使われます。
さらに、ボード状のものだけでなく、施工したい箇所に吹き付けることが可能です。
メリット
- 水、湿気に強い
- 軽い
- ボード状で施工しやすい
- 直接吹き付けて施工できる
デメリット
- 価格が割高
- 熱に弱い
- 有毒ガスが発生する可能性がある
硬質ウレタンフォームには、ほかの断熱材にはない「自己接着性」があることが最大のメリットです。
現場で発泡させたウレタンフォームは、施工したい箇所に直接吹き付けることが可能で、金属やコンクリート、合板に接着させて断熱層を作ることが可能。
万が一燃えてしまったときに有毒ガスが発生してしまう危険性がありますが、メーカーの研究により性能が上がってきているため、それほど気にしなくてよさそうです。
フェノールフォーム
フェノールフォームは、フェノール樹脂に発泡剤と硬化剤などを加えて板状にした断熱材です。
こちらも、外張り断熱工法、充填断熱工法の両方で使われます。
メリット
- 断熱性が高い
- 水、湿気に強い
- 耐熱性に優れている
- ボード状で施工しやすい
デメリット
- 価格が割高
- 有毒ガスが発生する可能性がある
フェノールフォームは断熱性が高いのが最大の特長です。
同じ厚みのグラスウールと比べると、熱伝導率が約半分、要するに断熱性が約2倍ということ。
万が一燃えてしまったときに有毒ガスが発生してしまう危険性がありますが、メーカーの研究により性能が上がってきているため、それほど気にしなくてよさそうです。
DIY・ホームセンターにもある断熱材の選び方ポイント
自宅や相続物件などの暑さ・寒さ対策のためにDIYしたいと思ったとき、どのような断熱材を選べばよいのでしょうか。
断熱材にはさまざまな種類がありますが、中でも自分の物件にぴったりの断熱材に出会うための選び方ポイントをお伝えします。
燃えにくい
不動産を持つ大きなリスクのひとつが火災です。
万が一、大きな地震などによって火災が起きてしまったときに、燃えやすい断熱材を使っていて炎が大きくなってしまっては大変。
大切な家族を守るために、燃えにくい断熱材を選ぶことは必須です。
湿気に強い
断熱材は、その中に空気を含むことで断熱性を発揮します。
そのため、断熱材が水に濡れてしまうと断熱効果を失ってしまいます。
とくに、グラスウールは吸湿する機能がないため、湿気に弱い性質があるので注意が必要です。
湿気に弱い断熱材を選ぶのであれば、適切な気密・吸湿処理を施さなければいけないということを覚えておいてください。
熱に強い
熱に強い断熱材を選ぶこともポイントのひとつです。
もしも自分の物件の隣の家が火災になってしまった場合、燃えなかったとしても、かなり高温の熱を浴びてしまうことになってしまうでしょう。
そのときに熱の影響を受ける断熱材を充填していれば、隙間が生じて断熱性が落ちてしまうことが考えられます。
断熱材の種類によって耐熱温度は違います。
どの程度の耐熱温度が必要かは隣の建物との距離や延焼リスクによって違うため、適切な断熱材を選ぶことが大切です。
気密性が高い
断熱材の断熱性は、気密性に大きく左右されます。
気密性を高くするためには、気密が確保できるような正しい施工ができるかどうかが重要です。
DIYを行うのであれば、自分の施工でも気密性が確保しやすい断熱材を選ぶ必要があります。
価格を正しく把握
断熱材の価格は、メーカーにもより多少の誤差はありますが安価な順に並べると以下の通りです。
- グラスウール
- ロックウール
- ポリスチレンフォーム
- ウレタンフォーム
- フェノールフォーム
- セルロースファイバー
普及しているグラスウールがもっとも安価で、セルロースファイバーが最も高価となりました。
以上を参考に購入の際は、メーカーと相談しながら購入を決めるようにしましょう。
まとめ
断熱材は、快適な生活を送るために必要不可欠な建材なことは間違いありません。
とはいえ断熱材の価値は、コストパフォーマンスや断熱性の高さ、付加価値などさまざまで要因が存在するため、一概にどの断熱材が良いとは言えないのがネック。
どの断熱材が、自分の建てる住宅やリフォームする住宅にぴったりなのかは予算や場所、気候などの条件により変わってきますので、見極めることが大切です。
この記事を参考に、あなたにぴったりの断熱材を見つけていただけたら幸いです!