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親が認知症に!「成年後見制度」を利用して不動産売却する7ステップ

 2019/08/10 売却
 

「人生100年時代」の日本は、高齢者の4人に1人が認知症またはその予備軍と言われています。

「親が認知症になって施設に入るため、親の不動産を売りたい」

このような方も多いと思います。

認知症の人が家を売ったり家族が勝手に処分すると、その売買契約は無効になります。

親の代わりに売却するには「成年後見(せいねんこうけん)制度」を利用します。

正しい方法を知らずに売却して、施設に入ってから売買契約が取り消されてしまった・・・なんてことは避けたいですよね!

 

そこでこの記事では、認知症の親の代わりに不動産を売却する正しい方法についてわかりやすく説明します。

 

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認知症になると不動産売却できない

不動産売却には以下の原則があります。

不動産売却できるのは名義人のみ

意思能力がないと不動産売却できない

血のつながった子供でも、名義人外が不動産売却することはできません

また、名義人本人が認知症になってしまったときも売却はできません。

  • 不動産売却によってどんな結果になるのか?
  • 売却にともなって発生する納税義務などを理解しているか?

このようなことが分からなければ、売買契約は無効になります。

 

成年後見制度とは?

成年後見制度とは、判断能力のない人の代わりに後見人が法的契約を行うことです。

成年後見制度の仕組みについてくわしく解説します。

 

成年後見制度は2種類

成年後見制度には以下の2つがあります。

  1. 法定後見制度…裁判所が後見人を選ぶ
  2. 任意後見制度…親が自分で後見人を選ぶ

 

【法定後見制度】

法定後見制度は、すでに認知症を発症しているときに利用します。

裁判所が後見人にふさわしい人を選ぶため、子供が代理人に立候補しても認められないこともあります。

法定後見人はさらに3つに分類されます。

  1. 後見人…本人の判断能力がまったくない
  2. 保佐人…本人の判断能力が著しく不十分
  3. 補助人…本人の判断能力が不十分

「後見人」にはほとんどの代理権が与えられますが、「保佐人」や「補助人」は制限付きの代理権になります。

 

【任意後見制度】

任意後見制度は、まだ認知症を発症していない場合に利用できます。

本人が「将来私が認知症になったらこの人を代理人にします」と、あらかじめ後見人を指名しておく方法です。

後見人に任せる管理内容も親が自分で決め、「任意後見契約」を結んで公正証書を作成します。

ただし、任意後見制度にはデメリットもあります。

取消権がない

契約書に記載された代理権のみ

取消権とは、一度結んだ契約を無効にすることです。

たとえば認知症の親が不要なリフォーム契約をしてしまった場合、法定後見制度では契約を取り消せますが、任意後見制度は取り消しができません

また、公正証書に記載されていない手続きは、後見人が行うことはできません。

嵯峨根
任意後見制度を利用する人はほとんどいないため、一般的には「成年後見制度」=「法定後見制度」のことを指します。

 

成年後見制度は裁判所の許可が必要

認知症になると、誰でも後見人がつくかというとそうではありません。

裁判所に申し立てをして「この人には成年後見人が必要ですね」と認めてもらうことで初めて“成年被後見人”になれます。

代理人についても「この人なら管理を任せられそうですね」と裁判所に認めてもらうことで“成年後見人”になれます。

 

成年後見人にふさわしい人

裁判所は、後見人候補者の職業や経歴などから、成年後見人にふさわしい人を選びます。

後見人として認められるのは、以下に該当する人です。

  • 親族
  • 弁護士
  • 司法書士
  • 社会福祉士
  • 法人
  • 市区町村長など

成年後見制度は、面識のない他人が親の財産管理をする可能性もあります。

また成年後見人が複数になったり、成年後見人がきちんと任務をしているかチェックする「成年後見監督人」がつくケースもあります。

 

成年後見人になれない人

認知症の人に24時間付き添って世話をしていても、以下に該当する人は成年後見人になれません。

  • 未成年
  • 破産者
  • 被後見人に対して訴訟を起こしている人及びその配偶者や直系血族
  • 裁判所によって解任された法定代理人、保佐人、補助人
  • 行方の分からない人
  • 不正行為など後見人としてふさわしくない事由のある人

財産管理をする法的効力がなかったり、社会的信用のない人は裁判所に選ばれることはありません。

 

成年後見人に選ばれるのは7割が専門職

親族が立候補しても、実際に選ばれるのは7割が弁護士や司法書士などの専門職です。

特に、以下の場合は第三者が選ばれやすくなります。

  • 親族が高齢者のみ
  • 親族間で争いがある
  • 親族が財産を使い込む恐れがある

2016年に「成年後見制度の利用の促進に関する法律」が施行されました。

最高裁判所は「後見人にふさわしい親族がいる場合、本人の利益保護のために親族を選任することが望ましい」と発表しました。

これにより、今後は親族も成年後見人に選ばれやすくなっていくでしょう。

 

成年後見人の義務と権利

成年後見人になると、不動産売却ができる権利を得ますが、同時に法的義務も発生します。

 

財産処分には正当な理由が必要

本人の財産を処分する場合は、「本人の利益のために使う」という正当な理由が必要です。

  • 本人が施設に入居する資金にする
  • 入院費や介護費用に使う
  • 空き家の場合、倒壊する恐れがあるため解体費用にあてる

あくまでも「本人の利益のために」というのが基本です。

たとえば、不動産売却時に「高くても安くてもどうせ本人は分からないから」と著しく低い価格で売却すると「本人の不利益」にあたり、売却が認められないこともあります。

 

居住用不動産の売却には許可が必要

居住用の不動産売却には、家庭裁判所の許可も必要です。

親が住んでいた家、退院後に戻る予定の家など、将来住む可能性のある家はすべて居住用に含まれます。

「居住用」の認識を間違えて裁判所の許可を得ずに売却すると、売買契約が取り消されてしまうので注意してください。

 

成年後見人の任務は本人が亡くなるまで続く

成年後見人になると、認知症の人が亡くなるまで財産を管理する義務があります。

不動産売却後も、家庭裁判所に財産状況を定期的に報告し続けなければなりません。

 

認知症…?グレーなときの対処法

年齢のせいなのか認知症なのかよく分からないとき、まずは医師の診断を受けてください。

 

3つの売却パターン

親の意思能力がどの程度あるかによって、3つの売却パターンがあります。

 

①意思能力が正常なら「委任状」

  • 病気で寝たきりになり入院している
  • 体が衰えたので施設に入っている

体が不自由でも、本人の意思がハッキリしている状態であれば「委任状」を作成し、代理で不動産売却をすることができます。

これが一番簡単な方法です。

 

②意思能力がなければ「成年後見制度」

  • 自分の生年月日が分からない
  • ここがどこかも分からない

体は元気でも、明らかに認知症と分かる状態のときは「成年後見制度」を利用して、後見人が不動産売却をすることになります。

後見制度を利用する場合、売却までに時間がかかります。

 

③軽度の認知症なら「委任状」または「任意後見制度」

  • 日常会話はできる
  • 記憶があいまいな部分もある

認知症の初期であれば、本人の意思能力があるうちに「委任状」または「任意後見制度」を利用して後見人を選出できる可能性があります。

ただし、その際は医師の診断と司法書士の判断が必要になります。

嵯峨根
本人の意思確認は、不動産登記をする司法書士が行います。

司法書士は「有効な売買契約であるか?」を確認する法的責任があるため、身内が委任状を作成して勝手に売却するなどの不正はできません。

 

【認知症チェックリスト】

東京都の発表しているこちらのチェックリストも参考にしてみてください。

【認知症チェックリスト】

  1. 財布や鍵など、物を置いた場所がわからなくなることがある
  2. 5分前に聞いた話を思い出せないことがある
  3. いつも同じ事を聞くなどのもの忘れがある
  4. 今日が何月何日かわからないときがある
  5. 言おうとしている言葉がすぐに出てこないことがある
  6. 貯金の出し入れや、家賃や公共料金の支払いが一人でできない
  7. 一人で買い物に行けない
  8. バスや電車、自家用車などを使って一人で外出できない
  9. 自分で掃除機やほうきを使って掃除ができない
  10. 電話番号を調べて電話をかけることができない

東京都福祉保健局「自分でできる認知症の気づきチェックリスト」

※このチェックリストはおおよその目安であり医学的診断に代わるものではありません。また身体機能が低下している場合はチェック項目が多くなる場合があります。

チェックの数が多いほど認知症である可能性が高くなります。

この他に「長谷川式認知症スケール」という、計算問題や記憶力のテストもあります。

司法書士が意思確認を行うときは、まったく関係ない書類を見せて「この不動産の売却で間違いないですか?」と聞き、正しく訂正できるかチェックすることもあります。

 

成年後見制度の手続きと売却方法

成年後見制度を利用して、認知症の親の代わりに不動産売却する具体的な方法を説明します。

 

成年後見申し立ての「7ステップ」

①家庭裁判所に申し立てをする

本人の住所地を管轄する家庭裁判所に「成年後見制度開始」の申し立てをします。

申し立てができるのは、本人、配偶者、四親等内の親族、検察官などです。

 

②家庭裁判所による調査と審理

家庭裁判所に依頼された医師が、本人の意思能力の評価と診断書を作成します。

必要な場合は鑑定も行います。

さらに家庭裁判所の調査官が、申立人・本人・後見人候補者から詳しい話を聞きます

その際、親族照会で親族同士の争いがないかもチェックされます。

 

③後見人選定と審判確定

家庭裁判所が法定後見人にふさわしい人を選び、後見開始の審判を確定します。

申し立てからここまでは3ヵ月ほどかかります。

 

④不動産業者と媒介契約をして買主を探す

信頼できる不動産会社と媒介契約を結び、買主を探します

売却に失敗しないために、不動産会社選びは慎重に行ってください。

 

⑤居住用不動産の場合は家庭裁判所の許可を得る

居住用不動産を売却する場合は、裁判所に「居住用不動産処分許可の申立て」を行います。

【居住用不動産処分許可申立の必要書類】

  • 申立書
  • 不動産の全部事項証明書
  • 不動産の固定資産評価証明書
  • 不動産査定書
  • 売買契約書の案(買主氏名、取引金額)
  • 売却資金の使い道

裁判所の許可を得ずに売却すると、売買契約は無効になるので注意してください。

 

⑥買主と売買契約を締結する

家庭裁判所の許可がおりたら、買主と正式に売買契約を結びます。

居住用不動産の場合は「裁判所の許可がおりたら契約の効力が発生する」という特約をつけ、先に売買契約を結ぶケースもあります。

 

⑦代金精算と所有権移転登記

買主から売却代金を受け取り、所有権移転登記と引渡しを行います。

売却代金はすべて親の口座に振り込まれます

親以外の口座に振り込むと、振り込まれた人が横領したと見なされてしまうため注意してください。

 

申し立てに必要な書類

成年後見申し立て時に必要な書類は、以下のとおりです。

【申立の必要書類】

  • 申立書
  • 本人の戸籍謄本
  • 本人と後見人候補者の住民票
  • 本人について成年後見の登記がすでにされていないことの証明書(法務局で取り寄せ)
  • 医師の診断書及び診断書附票
  • 本人の健康状態が分かるもの(障がい者手帳など)
  • 本人の財産目録(通帳のコピーなど)
  • 本人の収支についての資料
  • 親族関係図
  • 推定相続人の同意書
  • 後見人候補者の身分証明書など

親の意思能力の程度によって必要書類は異なります。

詳しくは住所地を管轄する裁判所または司法書士に確認してください。

 

申し立て費用は約1万円

成年後見制度の申し立て費用の内訳は以下のとおりです。

  • 申立手数料 800円
  • 登記手数料 2,600円
  • 切手代 3,000〜5,000円

必要書類の取り寄せにかかる実費、鑑定料(5~10万円)、弁護士や司法書士に依頼する場合は別途報酬が発生します。

手数料以外の費用は人によって異なりますが、まとまった資金を用意しておくと安心です。

 

成年後見人に支払う報酬は月額2~6万円

弁護士や司法書士が成年後見人になった場合、成年後見報酬として毎月報酬を支払います。

報酬は、管理する財産の額によって異なります。

財産額1000万円~5000万円…月額3~4万円

財産額5000万円以上…月額5~6万円

支払いは親の財産から捻出しますが、8割の市町村で成年後見制度の助成制度があります。

 

ボランティアの市民後見人もいる

市民後見人とは、一般市民がボランティアとして認知症の人の後見人になることです。

報酬が発生しないことが前提のため、費用がなくても安心して利用できます。

市民後見人は、自治体が実施する研修を受講し、専門家のバックアップを受けながら後見人としての任務を行います。

厚生労働省によると、このような「市民後見推進事業」を実施している自治体は、36都道府県158市区町(平成26年度)あります。

 

【豆知識】利益相反とは?

後見人が知っておくべき知識に「利益相反」というものがあります。

たとえば【父・兄・弟】の3人家族がいるとします。

ある日弟が病気で意思能力を失ったため、兄が後見人になりました。

その後父親が亡くなり、兄弟で遺産を分け合うことになりました。

このとき、兄は「弟の後見人」の身分でもあり「遺産を受け取る相続人」の身分でもあります。

すると兄が遺産を多くもらって、弟が損をするような遺産分割協議が成立しまうということです。

このようなケースを「利益相反」と言います。

利益相反となる行為は法律で禁止されています。

この場合、兄の選択肢は次の3つです。

  1. 相続を放棄して成年後見人に専念する
  2. 後見監督人がいる場合、後見監督人が遺産分割協議をする
  3. 後見監督人がいない場合、特別代理人を選任する

遺産を放棄しないのであれば、自分以外の人に遺産分割協議をしてもらうということです。

特別代理人とは、1つの事案のためだけに任務を行う代理人のことです。

この例では「遺産分割協議をして、兄弟に公平に遺産を分配したら任務終了」ということになります。

 

まとめ

いかがでしたか?

家族が認知症になった場合は「成年後見制度」を利用して売却をすることになります。

成年後見の申し立てから売却までは、3ヵ月ほどかかります。

売却を急ぐ場合は、裁判所の手続きと同時に不動産売却の準備も進めておくことをおすすめします

弁護士や司法書士と連携している不動産会社であれば、成年後見人の手続きから不動産売却までサポートを受けられます。

信頼できる不動産会社を選ぶなら、複数の不動産会社を一度に比較できる無料一括査定サイトがオススメです。

こちらの記事を参考にチェックしてみてください。

あなたの家は高く売れる!【不動産売却は準備とスピードが命】

 

この記事があなたのお役に立てれば幸いです!

 

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ライター紹介 ライター一覧

嵯峨根 拓未

嵯峨根 拓未

所有資格:宅地建物取引士

初めての不動産購入や売却はわからないことだらけだと思います。
宅建士の立場から、不動産に関する正しい知識と情報をお伝えします!

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