相続税の基本ルールを覚えて正しい申告を!申告漏れには重いペナルティが・・・
土地や建物をはじめとし、近親の方から財産を相続する機会が訪れることがあります。
そんなとき、絶対に気を付けなければいけないのが相続税です。
もし相続税の課税対象になっている場合、相続額を申告をしなければいけません。
申告漏れや、申告額に間違いがあった場合にはペナルティが課せられます。
最悪の場合、懲役刑が課せられてしまうことも・・・
そんなことにならないため、基本ルールを覚えて相続税についてある程度理解しておいてください。
この記事では、
- 相続税について
- 申告しないとどうなる?
- 相続税の対象となる財産
- 相続税の基本ルール
- 相続税の控除制度について
など、相続税についての最低限知っておきたいことをお伝えします。
相続税について
相続税とは、人の死亡を原因とする財産の移転(相続)に着目して課される税金を指す。
引用:wikipedia
相続税は、「富の再分配」という、一部の富裕層が資産を独占するのを防ぐための制度に基づいて課税されます。
簡単に言うと、資産化の家計は代々お金持ちということでは資本が循環せず、低所得者が活躍するチャンスが減ってしまいます。
一定以上の遺産を税金というカタチで徴収することで、資本主義経済を健全に保つために富の再分配政策が生まれました。
この制度があるため、日本は諸外国に比べて相続税がとても高い国として知られています。
税率については次の表の通りです。
【相続税率の早見表】
区分 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | ― |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
相続をしたら申告が必要!申告しないと・・・?
相続税は、原則として被相続人が亡くなったことを知った翌日から10ヶ月以内に申告をしなければいけません。
もし、期限を過ぎても申告をしなかった場合や、申告額に誤りがあった場合、延滞税と加算税が課せられます。
また、虚偽の申告や何度も催告を無視するなど、悪質な場合には相続税法違反とみなされることもあります。
相続税法違反とみなされると、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金という重いペナルティを受けることになります。
まとまった金額を相続する可能性がある場合、相続税のルールをしっかりと把握しておかなければいけません。
相続税の対象となる財産
相続税の対象となる財産には次のものがあります。
不動産
土地や借地権、建築物などの不動産は、財産の中でもかなり大きなものとなります。
そのため、所有権をめぐって相続の際に揉めるケースもよくあります。
使用していない不動産がある場合は、できるだけ早く所有権移転の手続きを済ませるか、相続の際の権利についてはっきりと決めておくのがオススメです。
時間が経てば経つほど、相続権のある人が増えて複雑になったり、高齢になって判断能力が低下するなど、危惧される事態が増えていくことになります。
動産
自動車、家財、書画や骨董、貴金属などが対象となります。
市場価格で査定して評価します。
家財道具などのほとんどは価値が無かったり、処分にお金がかかることがあるので、正式な遺産の分割を行わずに形見分けのように処理するケースが多く見受けられます。
現金、預貯金
当然ですが、お金は財産となります。
「相続前にこっそりと移し替えたりすればわからないのでは?」と考える方も多いようですが、税務署が自宅に調査にやってきた事例がいくつもあります。
収入・支出・合計額を照らし合わせると、すぐに不正は暴かれるということです。
申告をしなかったり虚偽の申告をしたことがバレた場合には罰金の対象となります。
注意してください。
有価証券、債権
株式や国債・投資信託などです。
そのままでは価値がわかりにくいため、一度売却して現金に変えてから分割・相続する方法があります。
手続きに不安な点がある場合は、窓口で相談しながら進めてください。
ゴルフ会員権、リゾートクラブ会員権
数十万~数百万円になることもある高額な財産の一つです。
会員権証券がなければ、手続きが進められません。
また基本的には一人しか相続できないので、詳しくは各窓口や税理士などに相談してください。
無体財産権(特許権)
形のない財産として、特許権があります。
収益(補償金)の合計が50万円に満たない場合には対象となりませんが、それ以上の場合には収益を計算して精算する必要があります。
特許権を相続する場合には、特許庁長官に届け出をしなくてはいけません。
生命保険金、死亡退職金等
被相続人が亡くなったことで支払われる保険金や退職金は課税対象となりますが、一定の金額を限度に非課税となります。
算出の仕方は次の通りです。
みなし相続財産と呼ばれています。
相続開始前3年以内に贈与を受けた財産
被相続人から相続開始(死亡時)からさかのぼって3年以内に贈与を受けた財産も相続税の課税対象となります。
贈与された時の価額で相続税が算出されます。
相続人と正味の遺産額
ここから相続税の控除や計算方法についてご説明していきますが、その中で「相続人」と「正味の遺産額」という言葉が出てきます。
この2つの言葉をある程度理解していないとここから先の話を理解するのが難しいため、先にこの2つの言葉について簡単にご説明します。
相続人(法定相続人)
相続人は相続を受ける人のことを言います。
反対に、亡くなって相続をする人を被相続人と呼びます。
相続人については民法に定められているため、法定相続人と呼ぶこともあります。
相続人として認められるのは、子・直系尊属・兄弟姉妹・配偶者です。
それ以外の親族は、遺書などにより特別な意思表示がない場合をのぞいて、相続人とは認められません。
子には養子や非嫡出子も含まれます。
専属というのは祖先のことで、直系尊属とは直接血の繋がっている祖先、つまり両親や祖父母、曽祖父母のことです。
正味の遺産額
造族税は、相続した全ての財産に課税されるわけではありません。
(出典:国税庁HP)
相続税の対象となる遺産の価額を、正味の遺産額と呼びます。
正味の遺産額の計算方法は次の通りです。
①相続によって取得した財産の総額から債務・お葬式の費用・非課税の財産を差し引く※1
②相続開始からさかのぼって3年以内に贈与された財産を加算する
※1非課税の財産にあたるのは次の4つ。
- 墓所、仏壇、祭具など
- 国や地方公共団体、特定の公益法人に寄附した財産
- 生命保険金のうち【500万円×法定相続人の数】まで
- 死亡退職金のうち【500万円×法定相続人の数】まで
相続人を決めるルールと順位
相続人となるのは子・直系尊属・兄弟姉妹・配偶者ということは先ほどお伝えした通りですが、相続にはルールと順位があります。
相続のルールと順位は少しややこしいので、ここからできるだけわかりやすく説明します。
相続人を決める4つのルール
- 被相続人が結婚している場合は、常に配偶者が相続人となる
- 相続人には順位があり、上位のものが相続する
- 同じ順位のものが複数人いた場合、均等に全員が相続する
- 相続人が死亡している場合、相続の権利は引き継がれる
相続には上記の4つのルールがあります。
この4つのルールをもとに、相続人や相続の割合が決められます。
相続の順位
相続人には第3まで順位があり、上位にあたる相続人が一人もいない場合に限り、下位の相続人に相続の権利が移ります。
ただし、被相続人が結婚している場合、配偶者は常に相続人になるというルールがありますので、配偶者に順位はありません。
相続人の順位は次の通りです。
- 子
- 直系尊属
- 兄弟姉妹
第4位はなく、配偶者や第1〜3位までに該当する親族がいない場合、生前親密な付き合いをしていた方を「特別縁故者」として相続人にすることができます。
特別縁故者に相続をしたい場合、家庭裁判所に申し立てを行い、認められなければいけません。
特別縁故者として認められる人がいない場合、財産の全ては国の所有となります。
相続税の計算例
ここまででお伝えしたルールをもとに、相続税の簡単な計算をしてみます。
配偶者がいる場合といない場合でケースを分けて考えてみましょう。
ここでは相続人の考え方をわかりやすく説明するための計算例ですので、控除は考えないものとします。
配偶者がいるケース
まず、配偶者がいるケースから考えてみます。
配偶者がいる場合、常に配偶者は相続人となります。
配偶者の他に相続人に該当する親族がいる場合、50%が配偶者、残りの50%を同じ順位の相続人で均等に分割します。
配偶者と、相続人第1位の子供が2人いる場合を考えてみます。
このケースの場合、配偶者に50%、残りの50%を子供2人に分割するので、子供1人あたり25%となります。
第1位〜3位の相続人がいない場合は、配偶者が100%相続します。
配偶者がいないケース
配偶者がいないケースでは、第1〜3位に該当する相続人のうち、上位の相続人で相続を均等に分配します。
こちらも、子供が2人のケースで考えてみましょう。
子供が2人の場合、50%ずつということになります。
子供は第1位になりますので、第2位の直系尊属、第3位の兄弟姉妹がいても、財産の全てを子供が相続して分配します。
相続税が課せられないケース
相続税には、遺産に関わる基礎控除額というものがあります。
この控除額以下の相続の場合は相続税がかかりません。
例えば、妻と子供が3人いる場合の基礎控除額を計算してみましょう。
配偶者と子供は法定相続人に該当しますので、法定相続人は4人ということになります。
このケースの場合、正味の遺産額が5,400万円以下の場合、相続税はかからないということになります。
正味の遺産額が控除額以下の場合、申告する必要はありません。
まとめ
いかがでしたか?
相続の額が一定以上になる場合、遅れることなく申告をしなければいけません。
しっかりと申告しなければ、ペナルティが課せられるので注意が必要です。
悪質な場合、相続税法違反として罰せられることも・・・
そうならないためにも、早めに相続についてある程度考えておいてください。
相続税の計算や手続きは自分でもすることができますが、かなり大変なものです。
時間がかかるうえに、相続人や遺産額の計算が複雑になったりすることもありますので、費用はかかってしまいますが、弁護士に依頼するのがオススメです。
故人からすると、財産について親族が揉めるほどツラいことはありません。
この記事が、相続について考えるきっかけとなり、円滑な相続につながれば幸いです。