耐震等級って意味ないの?耐震等級3の家は倒壊しない?地震に強い家づくり
「耐震等級を引き上げるよりも間取りや設備に費用をかける方が、家づくりの充実度は増すんじゃないかな?」
「耐震等級3にしても大きな地震がくると結局意味ないんじゃない?」
住宅の安全性を確保する耐震等級ですが、いつ起こるか分からない災害において上記のような意見があるのも納得です。
しかし、耐震等級を高めることで安全性だけでなく今後のコスト面でもメリットはあります。
一生に一度の大きな買い物だからこそ、長期的に住み続けられる家づくりをしたいものですね。
今回は、実際に起こった過去の大地震のデータを元に、耐震等級に関する必要性を詳しく解説しました。
地震に強い家づくりの参考になれば嬉しいです。
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耐震等級3って意味“ある”vs“なし”どっち?
耐震等級3の意味がある、なし議論を行う前に共通比較データとして2016年に発生した熊本地震の結果を元に比較してみましょう。
熊本地震では震度7の大きな揺れに続いて、震度6強が2回、震度6弱が3回と短期間の間に何度も揺れを観測しています。
このような状況の中、耐震等級3の物件は倒壊・全壊したのでしょうか?
以下の図が木造物件の被害状況です。
引用:「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」報告書(国土交通省)
耐震等級3の建物は、建築基準法レベル(耐震等級1相当)に対して、大きな住宅被害は全くないことが分かります。
この検査結果より、耐震等級3は熊本地震同等の地震には倒壊防止効果があるといえるでしょう。
耐震等級3の意味がある
耐震等級3は、現段階で最も地震に強く安全性の高い家だといえます。
その他、住宅ローンの金利引き下げや火災保険が割引されるといった効果もあり、安全性だけではなく、長期的に支払っていくコスト面でも耐震等級3にする意味はあるといえるでしょう。
耐震等級3の意味なし
熊本地震のデータから見ると、耐震等級3の建物であれば大きな地震がきても全壊しないことが証明されています。
ただし、許容応力度計算を用いた耐震等級2の建物であれば、耐震等級3の強度と同等といえるでしょう。
あえて等級3を目指さなくても、等級2でも安全性は確保されているといえそうです。
耐震等級の基本
耐震等級とは、住宅の性能表示制度を定める『品確法』に基づいた、地震に対する建築物の強度を示す指標の一つのこと。
大きく3段階に分けられ、数字が大きいほど耐震性が高い建物という目安になります。
耐震等級1、2、3の特徴
下記の図から分かるように、耐震等級1は建築基準法の最低ラインと同等の耐震性があります。
新築一戸建ての住宅は、全て耐震等級1はクリアしているということになりますね。
さらに、数字が大きくなるほど地震に強い家といえるでしょう。
引用:おうちの悩み.com
- 耐震等級1は、震度7の地震で倒壊しないレベル
- 耐震等級2は、学校や病院など避難所レベル
- 耐震等級3は、警察署や消防など防災拠点同等レベル
上記のように、数が増えるほど耐震強度が上がっていきます。
耐震等級3相当
耐震等級3の認定を受けるには『住宅性能評価機関』へ申請し認定されなければいけません。
3相当とは、住宅性能評価機関への申請をしないが、耐震等級3同等の耐震制度のある建物ということ。
申請を行わないため、申請にかかる期間や費用がなく、耐震性は確保されているのが耐震等級3相当です。
しかし、公的に証明できるものがないので、例えば、保険の割引や金利の引き下げなどの優遇措置を受ける事ができません。
さらに、実際のことは施工会社しか分からないという難点もあります。
耐震等級3のメリットは、一定の基準をクリアすることで火災保険が安くなる
耐震等級が高いことにより、安全性が上がることはもちろんのこと、火災保険が安くなるというメリットがあります。
火災保険の割引率がこちら。
- 耐震等級3で50%OFF
- 耐震等級2で30%OFF
- 耐震等級1で10%OFF
上記の割引を適用するためには、住宅性能評価書などの証明書が必須です。
他にも、住宅ローンのフラット35Sや地震保険でも優遇されます。
このように、耐震等級3は単に地震に強い家というだけでなく、費用面でも優遇されていることが分かりますね。
耐震等級3のデメリットは費用面、間取りの制限
地震に強い家を造るなら壁の1枚1枚を分厚くし、細かく区切られた窓の少ない間取りにすると地震に強い家といえるでしょう。
まるで牢屋のような造りの家は地震に強くても、住み心地面では満足できるものではありません。
例えば開放的な広いリビングがある家にしたい場合、一部屋あたりが広く、かつ窓も大きくすることで希望の空間が叶うでしょう。
しかしそうすれば、耐震面では別途対策が必要になってくるかもしれません。
また、耐震等級3の家を造るのであれば、専用の建材や施工技術も必要となってきます。
他にも、証明書を発行するための検査費や取得費用も別途必要となり、総体的ににコストアップに繫がることは避けられないでしょう。
耐震等級3以上でも地震保険は必要?
「耐震等級3の建物なら倒壊の心配も少なく、地震保険は要らないんじゃない?」といった考えの人もいます。
保険とは“もしも”に備えるものなので、100%必要とも不要ともだれも言い切りできないものです。
ただ、地震には火災保険だけでは補え切れない地震による津波などの被害にも保険適用となっています。
他にも、家は倒壊しなかったけど、壁にヒビが入ったり、窓ガラスが割れてしまったなども地震保険では保証できる範囲内となるケースが多いです。
また、耐震等級3になってくると割引も高く最大で50%OFFにもなります。
このようにどこまでの保証するかというのは個々の価値観の部分ではありますが、耐震等級3で地震保険を加入するのであれば、等級が1や2の人よりもコスト面でお得といえるでしょう。
耐震等級3取得にかかる費用は?
大きく分けて以下の3つが必要となってくる費用です。
- 構造計算費用
- 施工費用
- 住宅性能評価費用
1つずつ詳しく見てみましょう。
構造計算費用
本来は、簡易計算といった計算法を用いて構造計算をしますが、耐震等級3になると許容応力度計算を用いて計算するようになります。
この許容応力度計算は、柱・梁・基礎など全ての部位に掛かる力を計算し、家の強度を数値化していくものです。
壁量計算の簡易計算とは違って、数百枚もの計算結果から、専用のソフトを活用し計算される結果は、簡易計算とは正確性が別次元となるのです。
そのため、自社で行う会社は少なく、専門家へ依頼するため費用の目安相場は、20~40万円ほど必要になってくるでしょう。
施工費用
耐震等級1に比べ耐震等級3にすると施工費用は数十万円アップすると言われています。
目安金額が曖昧なのは、施工会社によってグレードアップの追加費用が違うから。
また中には、耐震等級3が基本設定としている業者もあり、すでに組み込まれた状態での価格提示をしている会社もあるようです。
そのため、ハウスメーカー選びの際は、どのようなプランがあり、内訳はどういったものなのかを事前に知ることが重要でしょう。
住宅性能評価費用
耐震等級3の認定を受けるためには、『住宅性能評価書』を取得する必要があります。
住宅性能評価書を取得するためには、専門の機関に建築中の建物調査を行い、設計と施工が規定をクリアしているかを第三者の目線から証明しなければいけません。
そのため、申請や書類作成に約10~40万円ほどかかると言われています。
住宅性能評価書とよく似た言葉で、『性能証明書』があります。
性能証明書は、耐震のみに着目し記載された書類です。
一方、住宅性能評価書は耐震以外にも耐久性などの10項目を評価し記載された書類なので、補助金や長期優良住宅の申請などの時は、こちらが対象書類となるとこを覚えておきましょう。
耐震等級2に掛かる費用は?
耐震等級2にかかる審査また認定にかかる費用は、約20~30万円が目安金額です。
前述したように、耐震等級3との違いは耐震性能が耐震等級1に対して1.25倍、もしくは1.5倍といった差があります。
また、長期優良住宅の条件の1つとして、耐震等級2以上が条件となっているので補助金的な面からでも大きな差は余りないようですね。
耐震等級3の家は倒壊しないって本当?
地震の多い日本では、過去のデータを上回る地震が何度も起きています。
そのため、何度も耐震基準が見直されてきました。
直近では、2000年の6月に新耐震基準法が改正され、建物の倒壊率は格段に減ってきたように思います。
しかし、最新の耐震基準をクリアした住宅でも大地震を前に“倒壊しない”とは言い切ることができません。
冒頭でもお伝えしたように、過去データを上回る地震が起こる可能性もあります。
耐震等級3は1や2に比べると倒壊しにくい家ではありますが、自然災害に絶対解はないと認識しておきましょう。
耐震等級1だと不安?
「建築基準法と同等レベルの耐震等級1ではだめでしょうか?」と不安になる人がいます。
不安や心配などの感情面をピックアップしてしまうと、個々の認識や捉え方で答えが変わってしうので、まずは下記の図をご覧ください。
引用:株式会社イシカワ(耐震等級1~3木造住宅の被害図)
熊本地震では、揺れの大きなところでは震度7が観測されました。
多くの建物が倒壊する中で、耐震等級3と1では大きな差があることが見てとれます。
状況にもよりますが、耐震等級3の建物であれば、建物への損害は小さく地震後も早めに生活を立て直すことができるでしょう。
しかし、耐震等級1の建物は被害が大きく、再建するのに時間がかかってしまいます。
よって、耐震等級3あれば高確率で倒壊全壊から逃れられるということが分かりますね。
地震に強いハウスメーカー選びのポイント
費用面や技術面など個人が見ただけでは判断しにくい耐震等級。
相性のよいハウスメーカーを見つけるためには、いくつかのハウスメーカーを訪問し相見積もりを取りましょう。
この章では、ハウスメーカー選びについて4つのポイントを紹介しました。
下記を参考にあなたに合ったハウスメーカーが見つけてくださいね。
- モデルハウスの見学
- 注文住宅の自由度
- オプション対応になるものを確認
- 完成イメージの共有
完全な自由設計にする場合は、事前にハウスメーカーへ希望を伝えるようにしましょう。
その際に、できれば具体的な完成図を共有してみてください。
互いのゴールが明確になることで、完成した際、認識のずれを減らすことができますよ。
また、すでに決まった形があるならば、1度見学会に足を運んでみるのもおすすめです。
細かな部分については、図面や画像では伝わりにくいからですね。
まとめ
「耐震等級って意味ないの?」の問いには、「意味はあります」と答えられます。
耐震等級3にすることで、得られる効果は以下の通り。
- 地震に強い家が手に入る
- 火災・地震保険が安くなる
- 住宅ローンなどの優遇措置が受けられる
その反面、耐震等級をあげることでコストの負担もあがります。
耐震等級3にしたからといって、絶対安全と言い切ることはできません。
日々環境が変化する中、暮らしと災害は切っても切れないものです。
だからこそ、後悔しないよう、より家族が安全にかつ長期的に住み続けられる家を模索していきたいですね。
くれぐれも、マイホーム作りは慎重に…