サステナブル建築物等先導事業とは?内容や対象者、金額などをわかりやすく解説
SDGsがスタートして、はや7年が経ちました。
企業がSDGs達成にむけた取り組みをアピールしていることもあり、私たちの生活のあらゆる場面で環境に配慮した取り組みを見かけるようになりましたね。
例えば、大手カフェチェーン スターバックスはプラスチックストローを紙のストローへと変更し、大手コンビニチェーンでは『食品ロス』をなくすため、期限が迫る食品を割引する『エコ割引』を実施しています。
そんな中、建築業界にも環境配慮に関する取り組みが行われているのはご存じでしょうか。
今回は、その取り組みの一つである『サステナブル建築物等先導事業』についてご紹介します。
今や環境問題は、人類にとって切っても切り離せないもの。
この機会にぜひ、内容を理解し、住宅・建築に関わる際のヒントにしていただければと思います。
サステナブル建築物等先導事業とは
『サステナブル建築物等先導事業』を簡単にいうと、住宅・建築物に関して、環境に配慮した最新の技術を採用し、その普及に努めているプロジェクトに対して、補助金を出すという制度です。
サステナブル建築物等先導事業の分類
ひとくちに、サステナブル建築物等先導事業といっても、その分類は大きく2つに分かれます。
サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)
環境に優しい技術を使用した木造の住宅・建築物を建てるプロジェクトに補助金を出す。
サステナブル建築物等先導事業(省CO2先導型)
省エネ・省CO2に配慮した住宅・建築物を建てるプロジェクトに補助金を出す。
今回は皆様の住宅・オフィスを建てる際により関わりそうな『省CO2先導型』をメインにお伝えしていきますね。
『省CO2先導型』が開始した背景には、2050年カーボンニュートラルの実現やSDGsの達成があります。
それぞれの単語について、解説は以下の通り。
2050年カーボンニュートラル
2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすること。
全体としてゼロにするというのは、温室効果ガスの『排出量』と森林などによる『吸収量』の合計をゼロにするという意味です。
SDGs 『持続可能な開発目標』の意味で、2015年に国連サミットで採択された国際的な目標です。 自然環境への配慮だけではなく、貧富の格差拡大やジェンダー平等など、地球と人類に関わる17個の目標が掲げられています。 地球・人類の課題はまだまだ多くありますが、その中でも1番よく耳にするのはやはり環境問題ではないでしょうか。 近年では、世界各地で様々な自然災害が発生していますが、温室効果ガスによる気候変動も、それに影響しているという指摘があります。 環境問題は、ますます私たちの身近に迫ってきていますね。 実は、日本全体のCO2排出量の約3分の1は、住宅に住んだり、建築物を利用したりすることによって排出されていることはご存じでしょうか。 それらは一度建築されると長期にわたって使われ続けるため、地球環境に大きな影響をもたらします。 環境省の家庭部門CO2排出の調査によると、一般的な家庭1世帯では年間2.8トンものCO2を排出しています。 CO2排出の主な原因は家電、給湯器などの日々の生活に関わるものがほとんどですが、CO2排出量を減らすために全ての家電をエコ仕様に変更することは現実的ではありません。 そこで政府は、効果の高い省エネ・省CO2の技術を組み合わせ、それよって長期的にCO2排出量を抑える対策をしている住宅・建築物には補助金を出すようにしました。 つまり、住宅・建築物自体で地球温暖化対策の一環となるように進めているわけですね。 (出典:環境省) 政府が取り組む『サステナブル建築物等先導事業(省CO2先導型)』について、これから省エネ・省CO2を意識した住居やオフィスの建築を考えている方は特に興味が出てきたのではないでしょうか。 ただし、省CO2技術を導入している住宅・建築物の全てが補助金の対象となるわけではありません。 次に、実際に政府が応募している様式について具体的にみていきましょう! まず、補助金の申請をするにあたり「どこで募集内容を確認するか?」について。 『省CO2先導型』の募集・補助金の出資自体は国土交通省からですが、募集要領の内容等は 一般財団法人や国立研究開発法人等から確認が可能。 今回は例として下記のURLを参考として記載しておきます。 (出典:国立研究開発法人 建築研究所) 募集要項の内容をざっくりまとめると以下の通りです。 国が民間事業者等の住宅・建築プロジェクトを公募によって募り、学識経験者による評価に基づいて、国によって採択プロジェクトが決定されます。 (『5.補助金額・流れ』で詳しく説明します) 『住宅』と『住宅以外のオフィスビルなどの建築物(非住宅)』の省CO2プロジェクト(『4.対象者』で詳しく説明します) 主に、下記4種の事業における先導的な省CO2技術の整備費等を国が補助します。 令和3年度(第1回)の政府から応募がある部門 採択された年度を含めて原則4年以内に完了する事業が対象 中小規模建築物部門 延べ面積が概ね 5,000㎡以下(最大で 10,000 ㎡未満)の非住宅を新築する事業を対象 採択された年度を含めて原則4年以内に完了する事業が対象 採択された年度を含めて原則4年以内に完了する事業が対象 採択された年度を含めて原則3年以内に完了する事業が対象 ライフサイクルカーボンマイナス(LCCM)住宅を新築する事業を対象 ※LCCM住宅に関しては、下記を参照 (出典:JSBC日本サステナブル建築協会) 賃貸住宅トップランナー事業者部門 住宅トップランナー基準(賃貸住宅)を上回る 省エネルギー性能(※)を有する賃貸住宅を供給する住宅供給事業者を対象 採択された年度を含めて原則2年以内に完了する事業を対象 ※令和3年度(第1回)の応募様式です。年度・開催回ごとに変更されるため、応募の際は最新の情報をご覧ください。 現時点で令和4年度の応募期間は未公表のため、令和3年までの内容を元に、申請可能な期間の目安を記載していきます。 (令和4年は準備中 https://www.kkj.or.jp/sustainable/index.html(交付要綱などは公表されたが、期間はまだ)) 例年通りだと、毎年2回、下記の時期に募集が行われています。 (出典:JSBC日本サステナブル建築協会) 『2.事業概要』の応募様式にも記載しましたが、部門によって応募できる種類が異なります。 また、年度・開催ごとに応募できる部門や事業の種類も変更されますので、間違いのないようにしっかり確認してくださいね。 例年通りだと非住宅・住宅共に、一般部門は全ての事業に対して応募可能ですが、その他の部門は『新築』のみ応募ができることが多いようです。 建築物部門 (共同・戸建) トップランナー 事業者部門(共同) マネジメント システムの整備 ※令和3年度(第1回)の事業の種類です。年度・開催回ごとに変更されるため、応募の際は最新の情報をご覧ください。 応募をするからには、補助金の金額や、受け取るまでの流れは確認しておきたいポイントですよね。 まず、補助金額について。 建築物の種類や規模によって異なりますが、1プロジェクトあたり5億円(必要に応じて、上限金額は変更されます)を上限として補助金額が定められています。 補助額の内訳とそれぞれに設定される金額を下記の表にまとめました。 (① + ②) (実際の工事、建設費、整備費 などの費用) (プロジェクトを完了するために必要な経費) ※戸建て住宅は上限200万円以内 トップランナー 1プロジェクトあたり2億円まで ※対象の事業の種類・プロジェクトの規模などにより、補助額は変動します。 『サステナブル建築物等先導事業』の選定基準はとても厳しく、補助金を受け取るまでの難易度が高いとされています。 そのため、すまい給付金やグリーン住宅ポイント、各自治体で募集されている補助金などのように、必要書類を準備すれば必ず受け取れるわけではありません。 応募要領にはきちんと目を通し、審査の基準に満たすか否かは必ずチェックしてくださいね! 次に、補助金を受け取るまでの流れについて説明します。 応募する基準に当てはまっていることを前提に、下記の通りに進んでいきますよ。 注意点としては、2点あります。 1点目:国土交通省から採用の通知が届いた後、『交付申請』を決められた期限内に行うこと。 交付申請を行わないと、せっかく採用されたにもかかわらず、補助金を受けることができません。 2点目:補助金対象となっている事業が完了した後、報告書を提出する必要があること。 当然ですが、こちらも行わないと補助金を受け取れないので注意してくださいね。 先ほど補助金額の部分でも少し触れた通り、申請には条件があり、その基準はとても厳しいものとなっています。 私たちが納めた税金の一部を補助金に充てているため、環境問題に対して実効性の高い提案が求められることは当然ですね。 詳細は募集要領に記載があるので、応募する上では必ずチェックしてほしいのですが、重要なポイントが1点あります。 それは、『先導性』と『普及・波及性』です。 募集要領でも何度も登場する言葉で、この2つが評価をする上で、大切なキーとなっていて、両方を兼ね備えているプロジェクトが評価対象となります。 逆に技術の先導性が高くとも『普及・波及性』がないものは評価されない可能性がありますので注意が必要です。 というのも、サステナブル建築物等先導事業の目的が、『事業の成果を広く公表することで、取り組みの広がりや社会全体の意識啓発に寄与することを期待している』であるため、社会に普及できない技術は目的に沿わないということなのです。 申請する上で重要なポイントとなるので、しっかり確認しましょうね。 サステナブル建築物等先導事業の申請に必要な書類は、下記のURLから入手できます。 上記しましたが、令和4年度はまだ準備中のため、応募する予定の方はこまめにサイトをチェックしましょう。 いかがでしたでしょうか。 地球環境問題は、規模があまりにも大きすぎて「一人の力では何もできない」と考えがちです。 しかし、自分達が住む住居、働くオフィスそのものを環境に配慮した建物にすることで、大きな貢献につながるとわかりました。 そして、厳しい条件ではありますが、国もそういった活動を支援してくれる環境にあります。 支援を受けることで、私たちは金銭の面で余裕が生まれ事業・工事がしやすくなり、それと同時に、環境にも優しい住居を増やすことができる。 まさにサスティナブル建築物等先導事業の魅力であり、目的そのものですね。 この記事をきっかけに、住居・建物を建てる際に『サステナブル建築』というワードが頭に浮かぶようになった、そんな方が一人でもいると大変嬉しく思います。 そして、興味が湧いた方はぜひ一度、国土交通省の募集要領を確認してみてくださいね。 ▶︎関連記事 長期的にCO2排出量を抑える対策を
サステナブル建築物等先導事業の概要
募集内容はどこから確認できる?
募集要項の大枠と応募様式
補助金対象決定までの流れ
対象
事業の種類
応募様式
対象・条件
非住宅A 建築物(非住宅)/一般部門
4種類全ての事業を選択できる。
非住宅B 建築物(非住宅)/
単一建築物で、かつ新築事業のみ選択可。
住宅A 共同住宅/一般部門
4種類全ての事業を選択できる。
住宅B 戸建住宅/一般部門
4種類全ての事業を選択できる。
住宅C 戸建住宅/LCCM住宅部門
新築事業のみ選択可。
住宅D 長屋・共同住宅/
新築事業のみ選択可。
サステナブル建築物等先導事業を申請できる期間
公募の時期と回数
サステナブル建築物等先導事業の対象者
用途・部門事業の種類
非住宅
住宅
一般部門
中小規模
一般部門
LCCM住宅部(戸建)
建築住宅
①新築
◯
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②既存の改修
◯
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◯
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③省CO2の
◯
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④省CO2に関する技術の検証
◯
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◯
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サステナブル建築物等先導事業の補助金額・応募の流れ
補助金額
補助額の限度額
補助額の内訳と補助率
①建築工事等に係る費用
②附帯事務費用
非住宅
1プロジェクトあたり5億円まで
①の2分の1以内の金額まで
①の2.2%以内の金額まで
住宅
1プロジェクトあたり5億円まで
①の2分の1以内の金額まで
①の2.2%以内の金額まで
住宅・賃貸
1戸あたり20万円かつ、
①の2分の1以内の金額まで
ー
補助金を受け取るまでの流れ
サステナブル建築物等先導事業の申請条件
サステナブル建築物等先導事業を申請するために必要な書類
まとめ
新築時に受けられる減税制度まとめ
この記事の監修:嵯峨根 拓未
所有資格:宅地建物取引士