二世帯住宅の間取り3タイプのメリット&デメリットを解説!実例&失敗例も
「注文住宅で二世帯住宅を建てたいけど、どんな間取りにしたらいいか分からない…」と悩んでいませんか?
実は二世帯住宅は3つのタイプに分けられるのです。
それぞれ特徴やメリット・デメリットも違うので、それらをよく理解したうえで間取りを決めることが大切です。
住んでから「こんなはずじゃなかったのに…」と後悔してしまうことがないよう、この記事では二世帯住宅の間取り3タイプ、それらのメリットとデメリットなど、プロの目線からわかりやすく解説していきます。
二世帯住宅建築を検討している方は、ぜひ参考にしてくださいね。
【タイプ別】二世帯住宅は3タイプ!それぞれのメリット&デメリット
同じ建物内に親世帯と子世帯が同居する住宅のことを二世帯住宅と呼びます。
さらに二世帯住宅は、設備や生活空間をどこまで共有するかによって大きく3つのタイプに分けられます。
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どのタイプを選ぶかによって、暮らし方や家族同士の関わり方が大きく変化するため、間取り選びは非常に重要なものです。
まずは二世帯住宅の3つのタイプと、それぞれのメリット・デメリットをみていきましょう。
完全同居型(融合型):ふれあい重視
完全同居型(融合型)は、お風呂、トイレ、キッチンなどの水まわり、リビングダイニングなどの生活空間、収納スペースや玄関など、すべての設備を共有するタイプ。
夫婦や子どもの寝室など一部の部屋を除き、設備はすべて共有することになるため、親世帯と子世帯との生活リズムが同じ場合や、家族とのふれあいを重視したいご家庭におすすめの同居スタイルです。
しかし逆を言えば、お互いのプライバシーを重視しているご家庭には不向きなタイプとも言えます。
【完全同居型のメリット】
完全同居型の最大のメリットは、親世帯と子世帯のコミュニケーションがとりやすい点です。
そのため、親世帯がいつでも孫の顔を見られる、子世帯が親の介護をしやすいと言った声もよく聞かれます。
また、すべての設備を共有することで、建築コストや光熱費を安くおさえることができるというメリットもあります。
【完全同居型のデメリット】
完全同居型は、親世帯との関係によっては常に気をつかわなければならず、窮屈な生活がストレスの原因になってしまう可能性があります。
その他にも、掃除の仕方や使い方など、お互いの価値観のズレから思わぬ問題が発生することも…。
プライバシーを守りにくいからこそ、お風呂の時間やキッチンの使い方、生活音の配慮など、親世帯と子世帯でトラブルにならないよう注意が必要です。
こうした注意点が多いところは、完全同居型のデメリットと言えるでしょう。
部分共有型(共有型):ほどよい距離感
部分共有型(共有型)は、水まわりや玄関など、住宅設備の一部を共有するタイプの二世帯住宅です。
親世帯と子世帯の生活リズムが違うご家庭や、プライバシーを確保しつつほどよい距離感で同居したいご家庭におすすめです。
【部分共有型のメリット】
部分共有型は、親世帯と子世帯のプライバシーを守りつつ、困ったときはお互いに協力しやすい距離で暮らせるバランスの良さがメリットです。
将来、親の介護が必要になったときも、近すぎず遠すぎず、ちょうど良い距離感をキープできるでしょう。
また、共有したくない部分は分けるという選択ができるので、お互いの意見を取り入れながら間取りを決めていける自由度の高さも、部分共有型ならではの良さです。
【部分共有型のデメリット】
部分共有型は、設備の一部のみを共有することで、光熱費の支払いが複雑になってしまうというデメリットがあります。
電気代を気にしてエアコンを使うのを遠慮したり、生活費とはいえ、毎回金銭のやりとりをしたりすることにストレスを感じてしまう可能性もあります。
複雑化しやすいからこそ、親世帯と子世帯とで、同居前にきちんとルールを作るようにしておくと安心ですよ。
完全分離型(分離型):プライバシー重視
二世帯住宅:完全分離タイプの例(縦割り)
完全分離型(分離型)は、同じ屋根の下で生活はするものの、住宅設備を共有することはなく、それぞれの世帯が完全に独立しているタイプです。
マンションやアパートなどの、”共用住宅の隣同士”と考えるとイメージしやすいかもしれませんね。
親世帯と子世帯の生活リズムが異なる場合や、それぞれの生活に干渉されたくない、というご家庭におすすめの二世帯住宅です。
【完全分離型のメリット】
完全分離型の一番のメリットは、二世帯住宅でありながらも、お互いのプライバシーがきちんと守られる点です。
お互いの生活音が聞こえにくく、住宅設備も気兼ねなく使えたり、インテリアも自由に選べたりなど、気遣いで疲れてしまうことがありません。
生活が完全に独立しているため、将来、片方の家が空いたときに売却や賃貸住宅へのリフォームなどがしやすい点もメリットです。
【完全分離型のデメリット】
完全分離タイプは、親世帯と子世帯のコミュニケーションがとりにくいというデメリットがあります。
玄関が別々なので、顔を見るためには一度外に出なければなりません。
「玄関を出る」という一つの手間が、いざ介護が必要になった場合に、面倒に感じてしまう可能性が高くなります。
介護のしづらさを考えると、完全分離型は他の2タイプの中で最も介護がしづらく感じるかもしれません。
またキッチンやお風呂、トイレなどの水まわり設備が、すべて2セットずつ必要になるので、完全同居型や部分共有型に比べて、建築費がかさむ点もデメリットといえるでしょう。
二世帯住宅の間取り実例
二世帯住宅は、一般的な間取りとは違う部分も多く、「どんな間取りにすればいいのか分からない…」と悩むご家庭は多いものです。
そこで、3タイプの二世帯住宅の間取り事例をご紹介します。
家族構成や動線など、実際の暮らし方をイメージしながら参考にしてみてくださいね。
=親世帯
=子世帯
=共有部分
完全同居型
参考:ライフプラスハウス 二世帯住宅間取りプラン
延床面積:99.38㎡(30.06坪)
親世帯の部屋が玄関やトイレから近く、介護時の動線がラクになる間取りです。
30坪とコンパクトな延床面積で、狭小住宅地にもおすすめです。
部分共有型
参考:二世帯住宅間取りプラン集
延床面積:198.74㎡(60.12坪)
玄関に、二世帯分の靴が入るシューズクロークをもうけ、収納スペースをたっぷり確保した間取りです。
子世帯の来客時にもお客様が気を使わずにすむよう、玄関付近に階段があるのもポイントですね。
完全分離型
参考:二世帯住宅間取りプラン集
延床面積:159㎡(48.10坪)
一階・二階の水まわりの位置を同じにした間取りです。
生活音が響きにくいうえ、将来的に賃貸や売却などの不動産活用もしやすいでしょう。
二世帯住宅の間取りでよくある失敗例
二世帯住宅は、間取りに失敗すると大きなストレスを抱えることになってしまいます。
そこで、親世帯と子世帯が一つ屋根の下で同居するがゆえに起こりがちな失敗例をご紹介します。
共有部分の利便性が悪い
住宅設備を共有する二世帯住宅タイプの場合、「共有部分が使いにくい…」という失敗は意外と多いものです。
- 好きなタイミングでお風呂に入れない
- キッチンの使い方や掃除方法が違い、ストレスになる
- トイレと洗面所が共有なので、朝の時間帯は大混雑する
こうしたことが毎日起こってしまうとなると、家がストレスのたまる場所になってしまいますよね。
設備を共有することで建築コストがおさえられることを先述しましたが、家は毎日暮らしていくものです。
先ほど挙げたような事態を防ぐためにも、共有部分の利便性が悪くならないよう、よく検討するようにしましょう。
玄関の共有で思わぬストレスが…
玄関を共有する場合、お互いの外出や帰宅時間が分かってしまいます。
そのため、以下のようなストレスを感じることもあるのです。
- 親世帯から帰宅時間について干渉される
- 息抜きのための外出がしづらい
- 友人を呼びにくい
親世帯と子世帯とでライフスタイルの違いがあるのは当然のこと。
そのような違いをお互いに理解し合えるかどうかによって、ストレスの有無が大きく変わることは間違いありません。
そうした部分がストレスになってしまう可能性がある方や、生活に干渉されたくない場合は、玄関を別にすることをおすすめします。
介護を想定していなかった
介護を想定せずに二世帯住宅を建ててしまい、失敗したというケースもあります。
- 完全分離型にしたら、介護のために一度外に出ないといけないので大変
- トイレ内が狭く、介護しづらい
- 階段の上り下りにも介護が必要になった
親世帯が元気なうちは想像しにくいかもしれませんが、家族の介護は想像以上に大変なものです。
介護の負担を少しでも減らすためにも、将来の介護を視野に入れた間取りを検討するのがおすすめです。
二世帯住宅の間取りを考えるときのポイント
最後に、二世帯住宅の間取りを考えるときにおさえておくべきポイントを3つお伝えします。
生活しやすい二世帯住宅にするために重要なポイントとなるので、しっかりおさえておくようにしましょう!
プライバシーの確保
二世帯住宅で同居するうえで、プライバシーの確保は重要なポイントです。
せっかく住宅を建てたものの、「気を使いすぎてリラックスできない」なんてことになってしまえば、長く住み続けることは難しくなりますよね。
日々の生活で気を使い過ぎてしまう間取りは、お互いのためにも避けたほうが無難です。
- トイレやお風呂など、生活音が響きにくい間取りにする
- プライバシーを守りたい部屋には、鍵を取り付ける
- 分離型の場合、必要に応じて内扉の設置も検討する
こうした対策をすることで、気遣いからくるストレスが軽減できるほか、プライバシーも確保されます。
いざというときにいつでも声をかけられることを前提に、お互いストレスにならず、コミュニケーションがとりやすい間取りを検討するとよいでしょう。
老後のことを考えたバリアフリー
これからの二世帯住宅は、バリアフリー化が必須といえます。
バリアフリー住宅にするためには、1階を親世帯、2階を子世帯に分ける「上下割り」の間取りがおすすめです。
二世帯住宅:完全分離タイプの例(上下割り/横割り)
親世帯が高齢になり足腰が弱ってしまったときでも、階段がなく移動しやすいというメリットがあります。
また、段差の排除や手すりの取り付けなど、老後を見据えたバリアフリー住宅にしておくことで、数十年先でも安心して暮らしていけるでしょう。
家事や光熱費の分担
住宅設備を共有する場合、光熱費の請求はどうしても一緒になってしまいます。
そのため、親世帯と子世帯共に気を遣いながら冷暖房や洗濯機を使ったり、世帯分の光熱費の差額を金銭のやりとりしたりと、余計なストレスが溜まってしまうことも…。
水道・ガス・電気などの光熱費や、電話、インターネット等の通信費など、どこまでを負担するのか事前にこまかく相談して決めておくことをおすすめします。
また、お互いのライフスタイルを尊重し合えるよう、家事分担についてのルールを決めておくのもおすすめです。
家が完成してしまってから設備を分離することは難しいので、家族で十分話し合って決めるようにしてくださいね。
まとめ
二世帯住宅の間取りは3タイプに分けられます。
- 完全同居型…すべての設備を共有
- 部分共用型…一部の設備を共有
- 完全分離型…すべての設備を分離
生活空間や設備を共有することで、家族間のプライバシーが守られにくいというデメリットもあるものの、コミュニケーションがとりやすくなり、建築コストも抑えられるというメリットもあります。
しかし、共有した方がいいスペースと、分離させた方がいいスペースは、世帯ごとのライフスタイルや将来設計によって異なります。
こうした点も踏まえ、住宅カタログなども参考にしつつ、親世帯と子世帯とでじっくりと話し合いながら決めていくようにしましょう。
住みよい二世帯住宅が建てられることを祈っています!