盛土とは?切土との違いや宅地造成のメリット・デメリット、注意点やリスクも解説!
2021年に熱海で、盛土の崩落を防ぐ措置を怠った疑いで捜査が入った事件が記憶に新しいのではないでしょうか。
盛土は高い敷地に土地を作る時に必要な工程ですが、注意点や問題点をきちんと意識していかないと熱海のような災害に発展してしまう可能性があります。
今回の記事では、盛土とは何か、盛土のメリットや問題点を詳しく解説していきます!
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盛土とは
盛土(もりど)とは、谷や田んぼ、畑などの上に新しい土を運び入れて造成地を作る方法です。
斜面や地盤が低い土地に土を盛って固め、平らな敷地や周囲より高い敷地に土地を作ることを意味します。
盛土と切土の違い
盛土とは反対に、『切土』もあります。
盛土との違いは、地面を削り取った時の地盤面の高さ。
盛土とは傾斜のある土地を平らにするために地盤面を低くすることに対して、切り土は地盤を高くすることです。
切土は、元の地盤面が削ってあるため、全体的に均等で締まった地盤をしています。
盛土は、元の地盤の上に新たな土を元の地盤と、盛土部分の2つにわかれるため、境目がすべりやすくなるというリスクがあります。
盛土を行うのはどんな時?
盛土を行うときは、選んだ土地がゆるやかな傾斜地であった時。
平らな土地でないと、家は建てられないため、水平にするために盛土を行います。
仮に敷地がもともと平坦な土地であった場合、半地下を作成したい、庭の敷地の高度を上げたいといった要望があれば、盛土を行うこともあります。
盛土で造成されている土地の注意点
盛土はもともとの地盤に、後から土を付け加える行為です。
盛った土を重機で固めますが、いくら固めたといっても、後から乗せた土は強度を持ち合わせていないため、盛土部分に直接土台を配置しません。
家が傾かないようにするため、
- 硬い地層(支持層)に達するまでに鋼管杭を打つ
- 支持層まで遠くない場合は表層改良を行う
などの対策が必要。
特に、敷地地層の『強さ』が均等でないままの状態で盛土をすると、さらに不均等となり、家が傾きながら沈んでしまうことも(不等沈下)。
不等沈下が起こった家による大きな問題は以下の通りです。
- ドアや引き戸が開けづらくなる
- 壁にひびが入る
- 傾きによって体調不良(めまいや吐き気など)が起きる
家が傾いて大きな問題にならないように、建てる前にしっかりと対策を行うことが大切ですね。
盛土の造成地で問題が起こることも
山や丘などの土地を宅地にかえることを『宅地造成』といい、宅地造成によってつくられた宅地を『造成地』と呼びます。
かつて丘や山であった場所に、大きな住宅地を作る場合、まずは平らな敷地を作る必要があるため、盛土が行われます。
盛土を行った箇所は軟弱なため、少しでも頑丈にするために、コンクリート擁壁で囲みます。
しかし擁壁が崩れた時に、土の崩落などの問題が起こってしまう可能性が。
斜面に建てられたひな壇型住宅地の場合、敷地の所有者が擁壁の上や下側など、どの箇所を補修しなければならないのかをとりきめておく必要があります。
もし、ひな壇型住宅地に土地の購入を検討している場合、修復する危険性を綿密に考慮し、「どの場合、誰が責任を負うのか」を学んだうえで、敷地の購入を検討しましょう。
盛土の造成地の問題といえば、昨年7月に静岡県熱海市で起きた大規模土石流が記憶に新しいですね。
熱海市の伊豆山地区で大規模な土石流が発生し、大量の土砂が住宅地に猛烈な勢いで押し寄せ、多くの方々が亡くなり、甚大な被害が住民に降り掛かるという痛ましい事件でした。
警察が関係先を調査した結果、平成24年には盛土にひびが入っていたことが確認されました。
土地所有者は、行政から『触らないで欲しい』という話があったとして、危険な認識はなく、安全対策を行っていないことを説明。
盛土の崩落を防ぐ措置を怠ったとし、現状、実態解明を行っています。
宅地造成規制法とは
宅地造成規制法とは、土地や建物の利用・取引に対する様々な制限の法令です。
具体的な中身を詳しく説明します。
- 【規制区域の指定】がけ崩れや土砂の流出が生じやすい区域を『規制区域』と定める
- 【宅地造成の意義】規制区域内の宅地造成について定義する
- 【許可の手続】届出制よりもより厳しい許可制を採用する
- 【監督処分】許可の手続きを守らなかった人に対しては監督処分をする
- 【規制区域内における工事等の届出制】許可が不必要な工事でも安全の配慮から届出を義務付ける。届出制によって、がけ崩れなど生じる恐れがないか監視する
- 【宅地の保全義務・勧告・改善命令】許可を受けた工事でも、時が過ぎて災害が発生する可能性があるため、保全・改善命令をする
規制区域はどんな場所でも指定できるわけでなく以下のような場所が指定されます。
- 災害が生じる恐れのある大きい市街地または市街地になろうとする土地
- 宅地造成に関する工事について規制を行う必要がある場所
規制区域は都道府県知事が指定します。
都道府県知事が関係市町の意見を聴きながら、指定区域を公示、通知をしなければなりません。
盛土した土地に住宅を建てるメリット
盛土をして住宅を建てた場合のメリットを詳しく解説します。
浸水を回避できる
盛土をすると地盤が高くなるため、浸水が回避できます。
さらに勾配ができることによって、雨水や下水の排水がしやすくなることがメリットです。
また、一般的に海岸地帯に家を建築する場合は水害対策が必要ですが、盛土を行った土地は災害時を除き、膝上に浸水することは滅多にありません。
したがって、盛土の上の住宅は、床上浸水の被害は無いと考えてよいでしょう。
道路からの視線を避けられる
人通りが多い場所に住宅を建てる場合、外からの視線が気になりませんか?
盛土は、地盤を高くするため、歩行者の視線や、上から覗かれるような視線を遮る効果があります。
「大きめの窓を作成して、日当たりを改善したい」「敷地が限られていて、外から遮断されるような塀が作れない」といった問題点は、盛土を行うこと解決するケースがあります。
新築住宅を建てる時に、周辺環境を見ながら検討しましょう。
盛土した土地のデメリット
冒頭でもお伝えした通り、盛土のデメリットをきちんと理解していないと大災害につながります。
今回は、盛土した土地のデメリットを2つ解説します。
不同沈下の可能性がある
1つ目のデメリットは不同沈下の可能性があることです。
山などを切り開いた造成地の場合、切土と盛土が混在するパターンが多いです。適切な選定や地盤改良を怠ると、『不同沈下』が起こってしまいます。
盛土を行う時、新しい土を入れたあと押し固める作業(転圧)を行うものの、長期間に渡って大きな荷重がかかることや雨が降り水分を含むと、土が流れやすくなることが原因です。
家を建てる前には、必ず地盤調査を行い、信頼のある専門家に判断してもらいましょうね。
地盤調査・地盤改良の費用がかかる
2つ目のデメリットは地盤調査・地盤改良の費用がかかることです。
柔らかい地盤を持つ農地は、宅地転用をする場合、住宅の重みに耐えられるように『地盤改良』という造成工事が必要です。
地盤改良の相場は、工事内容によって大幅に変動するため、一概にいくらと伝えることが難しいですが、一般的な地盤改良費用の相場は以下の通りなので、参考にしてください。
- セメント系固化材を使った表層改良:1㎡あたり1万円程度
- 5m以下の鋼杭を使った柱状改良:2万円以上
- 5m以上の鋼杭を使った柱状改良:4万円以上
単純な盛土工事であれば、1㎥あたりの単価・費用は約7,000円程度。
農地から宅地へ変更する際は地盤改良が必要なケースが多いため、整地・伐採が必要となるケースもあります。
さらに、傾斜地の盛土・切土工事の場合、条件がそれぞれ異なるため、具体的な費用を算出することは難しいです。
相続税を算出する時に活用される「財産評価基準書」の造成費用を載せましたので、参考にしてくださいね。
傾斜度 | 宅地造成費の評価額 |
3°超〜5°以下 | 19,200円 / ㎡ |
5°超〜10°以下 | 23,300円 / ㎡ |
10°超〜15°以下 | 35,600円 / ㎡ |
15°超〜20°以下 | 50,300円 / ㎡ |
20°超〜25°以下 | 55,500円 / ㎡ |
25°超〜30°以下 | 58,300円 / ㎡ |
出典:国税庁「令和3年分 財産評価基準書 宅地造成費の金額表」
盛土した土地を購入するさいの注意点
盛土が行われた土地を購入するときは、以下のことに注意が必要です。
注意点の中には地盤沈下など安全面に関わる点もあるので、確実におさえておきましょう。
液状化リスクを確認
液状化は、完成したばかりの比較的新しい土地や、もともと沼や池であった土地を埋め立てた場所に起こりやすいです。
検討している土地の液状化リスクは、各自治体が公表している『液状化ハザードマップ』で知ることができます。
土地の購入を検討している場合、契約前に必ず確認をしましょう。
地盤を調査する
この記事を読んで、「造成地を購入し家を建てることを検討しているけれど、地盤が安全なのか?」と不安になっている人もいるのではないのでしょうか。
造成地に家を建てる場合は、造成状況の確認や地盤調査を実施して地盤対策を行うことは必須。
人工的に生成された土地は、自然の地盤よりも不安定、さらに盛土をして間もない造成地は地盤が安定していないため、地盤沈下が起きやすいためです。
地盤調査をする場合は、実績のある地盤調査会社に依頼をしましょうね。
盛土の中に異物がないか確認
盛土された地盤が定着し、沈下や圧縮などのトラブルが起こらなくなる期間は、3年から5年程といわれています。
盛土の内部に大きな石や木の根、瓦礫などがある場合、空洞ができてしまったり木の腐植が進んだりしてしまいます。
空洞や腐植があることで、地盤が落ち着かず、10年近く経たないと安定しないことも。
瓦礫などの異物が混入しないように施工を依頼し、施工業者に異物を入らないようにと念押ししておきましょう。
地盤に排水工を設ける
盛土をする前の地盤に地下排水工を設置することで、水の浸出を未然に防ぎ、土地を安定させやすくすることができます。
特に田や畑などの跡地に住宅を建てようかと検討している場合には、水路は水が浸入しやすくなる可能性があるので、必ず地下排水工を設置し、盛土への水の浸入を防止しましょう。
可能な限り盛土部分を避ける
盛土をした土地は、地盤が非常に脆い状態です。
転圧と地盤改良工事で土地の強度を補填しますが、可能な限り盛土部分を避けて建物を配置する方が良いでしょう。
どうしても盛土部分に建物を配置することを避けられない場合は、地盤を強固にする改良を検討してください。
施工業者と十分相談のうえ、安全性の高い場所へ建てることがその後の安全と安心に繋がります。
まとめ
盛土の目的は、住宅を建てる時に地盤を高くし平らにすることです。
浸水被害対策などに効果的ですが、地盤が弱いため、土砂崩れや不同沈下が起きる可能性があります。
メンテナンスや定期的な調査を行い、いつでも安心安全な状態にしておけるよう、努めましょう。
盛土をするかどうかを施工業者と綿密に検討し、慎重に判断をしましょう。
弱い地盤を強くするためには、費用がかかり様々な対策が必要となってきますが、自分や家族の命を守るための選択をしてくださいね。
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