木造住宅の耐用年数とは?実際に住める家の寿命とメンテナンス例
結婚や出産を機に、家の購入を考える人は多くいます。
ローンの返済中はもちろんのこと、完済後も安定的に長く住める家が理想ですよね。
支払いから解放されたら、次は大規模な建て替えが必要…。
なんてことにならないように、ライフプランはしっかり組みたいところ。
3世代超えて住み続けられる家づくりのポイントを詳しく見てみましょう。
木造住宅の耐用年数とは?
木造住宅の耐用年数は一般的に22年です。
ただし、耐用年数といっても、さまざまな要因によって年数は変動します。
主に耐用年数は4種類に分類されます。
- 税務上
- 市場価値
- 劣化度合い
- 期待値
耐用年数の意味を理解することで、不動産の正しい価値や使用可能期間の目安が分かります。
例えば、建て替えや買い替えの最適なタイミングが分かったり、中古物件が適正価格なのか判断できるようになったり。
資産価値が分かれば、不動産事業として活用することも可能になります。
法定耐用年数とは?
法定耐用年数とは、税務上の公平性を一定に保つために計算される耐用年数のこと。
不動産を購入すると、固定資産税を毎年支払いますが、例えば、新築で建てた家と築30年以上経過した住宅の固定資産税は違います。
なぜかというと、建物は毎年減価償却する必要があり、課税の公平性を保つためです。
法定耐用年数は、実際の劣化具合や市場価値とは関係なく計算された年数であり、税務上のために用いられる年数です。
よって、家の寿命とはまったく関係のない年数ともいえるでしょう。
経済的耐用年数とは?
経済的耐用年数とは、市場での住宅価値を表した年数のこと。
簡単に伝えると、建物の劣化だけでなく住宅の周辺環境も影響して決まります。
例えば、購入当初は田畑に囲まれていたのに、現在は近所に大型ショッピングセンターが建ち、道路も整備されて人通りも多くなった。
そうなると経済的耐用年数は、購入当初より長くなると判断されます。
また、経済的耐用年数を測るのには、立地のみが関係しているのではなく、時代に合った間取りやメンテナンス具合も決める要因の一つです。
物理的耐用年数とは?
物理的耐用年数とは、建築部材の劣化に伴った住宅として使用価値を表した年数のこと。
例えば、外観は雨風によって年月がたつほど劣化します。
内観についても、時間と共に柱や床なども劣化しますよね。
物理的耐用年数を測るためには、目でみえる劣化具合だけでなく、下記のような点も判断材料の一つです。
- どのような資材を使用しているのか?
- メンテナンスは定期的に行っているのか?
- 土地の気候にはどのような特徴があるのか?
このように全てを含め判断されるので、同条件の物件は限りなく少なく、物理的耐用年数は一つの目安として認識するのがよいでしょう。
期待耐用年数とは?
期待耐用年数とは、今後住宅として使用できるであろう年数を表したもの。
期待耐用年数が分かることで、中古物件が適正価格なのか判断する目安となります。
例えば、リフォームしないと住めないような物件は期待耐用年数が短いとされ、すぐにでも居住可能な住宅は期待耐用年数が長いとされています。
期待耐用年数には、物理的要素や経済的な要素も含まれることで、正当な価値を知る目安といえるでしょう。
実際に住める住宅の寿命は?
実際の寿命は、日頃のメンテナンスによって大きく差が生まれます。
耐用年数は、目安といえるものが多く、実際の寿命とは違いましたね。
ただし目安となる耐用年数ですが、今後のライフプランを設計する際の判断材料としては有効だといえます。
耐用年数が30年と言われる理由
結婚や出産を機に家を建てる人が多くいます。
『30年』は子どもが巣立って、第二の人生を歩みだす分岐点ともいえますよね。
その際に、家を手放して利便性のよい賃貸マンションに引っ越す人や、田舎暮らしをスタートする人もいます。
他にも、1981年に行われた耐震基準の改正で、大規模なリフォームが必要になる人も。
多額の費用が必要になるリフォームはやめて、建て替えを選択する人も多くいるでしょう。
さまざまな要因が重なりやすく変化しやすいのが『30年』だといえます。
耐用年数が22年と言われる理由
22年と言われると短く感じる人もいるかと思います。
この数字は、法定耐用年数でお伝えした、税制上で決められた年数を指します。
減価償却を用いて決められた年数なので、実際の寿命とは全く違ったものといえるでしょう。
2種類の減価償却と耐用年数
法定耐用年数を決める際に減価償却は必須科目となります。
減価償却を知ることで、税制上での住宅の価値を知ることができるだけでなく、もしも自宅兼事務所として活用している場合、節税できる可能性も。
次項では、減価償却について掘り下げてみましょう。
減価償却とは?
減価償却とは、固定資産税を使用期間で割って、計上する会計上の処理のこと。
購入時を100%とし、建物は年数がたつほど劣化していくので、その分資産価値が目減りすると考え、税制上での負担を軽減していくのです。
この時、会計上、土地は含まず建物のみとして計算します。
居住用建物の減価償却
木造住宅の法定耐用年数は『33年』です。
業務用に比べ、居住用は長く使用されることを想定。
購入の際に、多額の税金が生じてしまうことを考慮し、資産価値が目減りしにくいよう政策的な配慮によるものとされています。
その他、鉄骨造なら28年。鉄筋コンクリート造なら51年。
こちらについても、業務用と比べると1.5倍長く設けられています。
業務用建物の減価償却
木造の業務用法定耐用年数は『22年』です。
業務用とは、アパートや戸建ての賃貸、店舗や事務所など事業として活用している不動産物件をさします。
こちらは、収益を目的としているため、居住用に比べると短くなります。
その他、鉄骨造なら19年。鉄筋コンクリート造なら34年。
税を徴収する先が個人か事業主かでこれだけの差がでるのは驚きです。
個人の税負担が軽くなるように配慮されていることが分かりますね。
建物の種類と耐用年数
固定資産税の目安である法定耐用年数は、建物によっても変わります。
詳しく見てみましょう。
一戸建ての場合
新築一戸建ての場合の法定耐用年数は『22年』。
中古一戸建ては法定耐用年数を超えている場合、『4年』が耐用年数となります。
マンションの場合
マンションの場合は、鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造で『47年』。
一方、木造アパートの場合、『20年』が耐用年数となります。
設備関連の場合
設備とは、電気・ガス・水回りの設備を指し、こちらの耐用年数は『15年以下』です。
中でも、蓄電池設備や冷暖房設備は短く『6年』に設定されています。
耐用年数が売却時に影響する理由
耐用年数が分かれば、不動産売却時の査定が公正に行われているか判断材料の一つとなります。
売却時の計算方法は、売却代金から取得費と手数料を引いた額が利益となります。
利益が出た場合、所得税が課されるため耐用年数を知ることで、税上の負担を知る目安となるのです。
木造住宅の寿命を延ばすメンテナンスとリフォーム例
多額の費用を払って購入した家だからこそ、自分たちの世代だけでなく子ども達にも残せる家にしたいものです。
税制上の耐用年数と違い、日頃からのメンテナンスで住宅の寿命は延ばせます。
特にオススメのメンテナンスとリフォーム例を紹介しますね。
水回りのメンテナンス
住宅の中で水回りは1番劣化しやすい設備です。
日常生活で頻繁に使用する水回りはこまめな掃除が重要。
腐食や水漏れを事前に防ぐことで、建物の寿命を延ばすことができます。
例えば、排水溝の掃除や除湿器を使用するなども寿命を延ばすメンテナンスの一つです。
プロによる定期点検
定期点検では、外壁のチェックや雨漏り、配管、クロスや建具のチェックを行います。
購入時に定期点検がついている業者を選べば、別途依頼する手間も省けますね。
購入時は、アフターフォローが長いハウスメーカーを選ぶことをオススメします。
シロアリ対策
シロアリによる被害では、構造の本体に支障をきたします。
柱を含む骨組みがシロアリに食われることで、寿命だけでなく耐震性にも大きく関わり、不安定な家となるでしょう。
防蟻剤の効力は5年が目安となっているので、定期的に専門業者への依頼をオススメします。
耐震対策
建築するにあたって耐震性は外せないポイント。
現在の耐震基準は1981年に改正された建築基準法によって定められています。
従来軸組やツーバイフォーといった工法だけでなく、外壁の仕上げ材を軽いものにしたり、屋根は昔ながらの瓦ではなく、軽量瓦を使用したりすることで、土台の強い家が建ちます。
また、リフォーム時は地域によって助成制度があることも多く、活用することでお得になることも。
耐震性について不安な場合は、地域の自治体やハウスメーカーを通して専門家へ相談をすることをオススメします。
100年後も住める木造住宅のポイント
欧州や欧米に比べると、不動産の市場価値が下がりやすい日本。
だからこそ、多額の費用を要したこだわりの家は長く住み続けたいもの。
家の寿命が30年と言われる中で、世代を超えて住み続けられる家は魅力的です。
100年後も住み続けられる家にするには、どのようなことに気をつければよいのでしょうか。
詳しく見てみましょう。
自然災害を考慮した土地選び
ハザードマップで土地の傾向を知ることができます。
例えば、学校や駅が近く商業的にも栄えている地域でも、ハザードマップを確認すると災害地域の場合もあります。
絶対安全と言いきれる土地はないかと思いますが、自然災害の影響を受けにくい土地を選ぶことで、長く住み続けられる家づくりはできますね。
また、事前に土地の傾向を知ることで、自然災害の備えにもなるでしょう。
アフターサービスが充実した業者選び
新築を購入した場合、基礎構造について10年間は保証することが法律で定められています。
また、アフターサービスでは定期的に点検を行い、住宅についての相談をすることもできますが、その対応範囲はハウスメーカーによってさまざま。
点検は行うが修繕については、有償という場合もあります。
保証期間の長さに目を向けがちですが、対応範囲や別途費用についても詳しく知ることが重要。
契約の際は、アフターサービスについて具体的に伺うことをオススメします。
地盤調査と安定した構造体の家選び
「地盤調査ってそんなに大事?費用を抑えることはできないの?」
強い家を建てるにあたって、構造がしっかりしているのは想像できますが、地盤調査の必要性やどのようなことをするのかは曖昧になりがち。
極端な話、地盤調査をしなければ地盤沈下や家の傾きの原因に繋がることも考えられます。
しっかりとした地盤に土台が安定した構造の家を建てることで、地震・水害に強い家づくりが叶います。
施工業者・地盤調査の業者それぞれがハウスメーカーと提携し、一連の作業を担うことが多く、業者選びの重要性が強い家づくりに関わることは過言ではありません。
全て任せっきりではなく、最小限の知識をつけることで、後悔のない家づくりができるでしょう。
中古住宅の購入時に気をつけるチェックポイント
注文住宅よりもすぐに住み始められる中古住宅は、手間なく住める家といえます。
自分の暮らしにあった物件があれば、作る手間は省けますよね。
そんな運命的な物件にも、より長く住むためにはいくつか知っておきたいポイントがあります。詳しく見てみましょう。
改修工事やメンテナンス履歴
物件の『持ち』は、日頃のメンテナンスとプロによる定期点検が重要。
- 劣化しやすい外壁や屋根の改修工事は対応済みなのか?
- 腐食しやすい水回りの改修工事は対応済みなのか?
- 内装のクロスが剝がれていないか
- ベランダの排水溝に詰まりはないのか
そういった点は事前確認が必要です。
理由は、今後の家の『持ち』に影響してくるから。
一見キレイな物件でも、実は手入れができておらず、購入後に修繕が必要ということにもなりかねません。
前の住人がどのように管理していたか、しっかり把握しましょう。
耐震構造履歴
1981年に建築基準法により耐震性の決まりが厳しくなりました。
改正前に建てられた物件の場合、耐震基準に満たしていないこともあります。
その場合、別途耐震対策をする必要があり、多額の費用がかかる可能性も。
例えば、購入費用を抑えて中古物件を購入。
その後、耐震基準に満たしていないことが分かり、補強のため、結果的に費用が多くかかってしまうこともあります。
構造など内部のことについては、表面上では見えない部分ですよね。
だからこそ、しっかりと確認し土台の強い家を購入しましょう。
まとめ
木造住宅の耐用年数と実際に住める家の寿命とメンテナンス例をお伝えしました。
木造住宅の耐用年数は一般的に22年。
ただし、この『22年』は法定耐用年数のことを指し、税制上での年数と表しています。
耐用年数は4種類あり、実際の住宅の寿命とはズレがあります。
- 税の計算の元となる法定耐用年数
- 市場価値を絡めた経済的耐用年数
- 劣化や腐食などを目安とする物理的耐用年数
- 今後も住宅として活用可能度を表した期待耐用年数
実際に住める家の寿命は、日頃のメンテナンスと定期点検の有無により左右されることが多いからです。
だからこそ、日常のメンテナンスに加え、プロによる定期点検をオススメします。
特に下記の3点は、家の寿命に大きく影響するので注意が必要です。
- 劣化しやすい外壁
- 腐食しやすい水回り
- シロアリ対策
世代を超えて住み続ける家を建てるためには、事前の準備も重要です。
- 自然災害に強い土地選び
- 強い地盤と土台を含む構造
- 長期保証が守られている業者選び
日本家屋の8割を占める木造住宅ですが、実際に住める家の寿命は家主に左右するといっても過言ではないですね。
多額のローンを組んで購入した家だからこそ、長く住める家づくりを目指しましょう。
マイホームづくりは、くれぐれも慎重に…
この記事の監修:嵯峨根 拓未 所有資格:二級建築士、宅地建物取引士 |