不動産売却を代理人に頼みたい!委任状の正しい書き方と3つの注意点
不動産を売ろうと思ったとき「代わりに売却してくれる人がいたらなぁ・・・」と思いませんか?
- 不動産売却を誰かに頼みたい
- 委任するときは何が必要?
- 頼んだ相手とトラブルにはなりたくない
不動産売却は高額な取引なので、基本的には本人しかおこなえません。
ただしやむを得ない事情があるときは、「委任状」を作成して代理人に任せることができます。
この記事では、不動産売却を代理人に委任するときの注意点について解説します。
記事を読むことで、あなたは安心して不動産売却を委任できるようになります!
不動産売却を委任する方法
不動産の売却は、原則、不動産の名義人のみしかできません。
しかし、やむを得ない事情があるときは委任によって売却を依頼できます。
委任できる4つのケース
「やむを得ない事情」とはどのような場合なのか、4つのケースをご紹介します。
①遠方に住んでいる
所有者が地方や海外に住んでいるときは、売却活動が難しいですよね。
不動産売却の手続きは「平日」「午前中」などの指定があり、仕事が多忙な人もスムーズな売却活動ができません。
②身動きがとれない
所有者が病気やケガで入院しているときは、代理人が本人に代わって不動産を売却できます。
また、高齢者、車いすの方など、動き回るのが大きな負担になる方も売却を委任することがあります。
③共有名義の不動産
共有名義の不動産売却をする場合、すべての手続きに全員の立ち会いが必要になります。
そこでスムーズに手続きを進めるため、代表者を1人決めてほかの名義人が手続きを委任する場合もあります。
また離婚によって共有名義の不動産を売却する場合など、お互いに顔を合わせたくないときも委任するケースがあります。
④未成年が不動産を相続した
未成年者が親の不動産を相続し、すぐに売却するケースもあります。
しかし未成年者は、自分名義であっても不動産を売却できません。
そこで法律で定められた親族が「法定代理人」となり、不動産売却をおこないます。
委任された代理人には強い権限がある
民法では、代理行為について次のように定めています。
【民法第99条】(代理行為の要件及び効果)
- 代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。
- 前項の規定は、第三者が代理人に対してした意思表示について準用する。
これは「代理人がやったことは本人がやったことになる」という内容です。
本人に代わって価格決定や値引き交渉をおこなうので、委任される側には大きな責任がともないます。
本人の意思確認は必要
代理人に不動産売却を委任する流れは、以下のようになります。
ポイントは、不動産会社の担当者や司法書士が、本人と一度は会わなければならないということです。
不動産会社が本人と会って売却の意思確認をしたうえで、委任の手続きに入ります。
本人しかできないことを他の人が代わりにやるので、最低限の意思確認が必要ということですね。

代理人は誰を指名してもよい
不動産売却の代理人は、誰を選んでもOKです。
ただし、あなたの資産を大きく左右することになるので、本当に信頼できる人を選ぶことが大切です。
一般的には、親族、司法書士、弁護士などに委任します。
委任状の書き方
不動産売却の委任状には、決まった書式はありません。
不動産会社のフォーマットを利用するケースも多いですが、それぞれの不動産会社によって記載内容が異なります。
あなたの意向に沿っているか?追加したい文言はないか?などを、しっかりとチェックしてください。
委任状のサンプル
ここで、トラブルになりにくい委任状のサンプルをご紹介します。
ぜひ参考にしてください。
委任状
委任者○○○(以下「甲」)は、受任者□□□(以下「乙」)に対し、甲所有の下記不動産を下記条件で売却することを委任し、その代理権を付与する。
売買物件 ○○○○
売買条件
1.売買価格 金○万円
2.手付金額 金○万円
3.引渡し日 令和○年○月○日
4.違約金額 売買価格の1割以上で、乙が買主と協議して定める。
5.公租公課の分担起算日 引渡し日
6.金銭の取扱い
乙は、買主から受領する手付金および売買代金その他の金銭を、受領の都度、すみやかに甲の指定する銀行預金口座(××銀行××支店・普通123456)に振り込み、引き渡す。
ただし、売買契約書に貼付する収入印紙代、固定資産税等の清算金その他の金銭で、甲が負担する必要があるものについては、乙がこれを売買代金等から控除し、残額を甲に振り込む。
前項の領収証の発行および受領は、すべて乙が甲の代理人として行う。
7.所有権移転登記申請手続
甲は、売買代金全額の受領と同時に、買主への所有権移転登記申請手続を行うものとし、そのための一件書類をあらかじめ△△司法書士に預託しておき、乙が、甲の代理人としてそのための準備と当日の確認を行う。
乙は、前項の所有権移転登記申請時に、買主に対し物件の引渡しを行うものとし、そのための図面その他の関係図書および鍵の引渡しをあらかじめ甲から受けておく。
8.その他の条件
本件売買契約に用いる契約書の書式は別添契約書を使用するが、それ以外の事項で上記売却条件に定めのない事項および上記売却条件の履行に変更が生じるときは、その都度甲・乙協議して定める。
有効期間
この委任状の有効期間は3ヵ月とする。ただし、甲・乙の合意により更に3ヵ月間更新することができる。
以上
令和○年○月○日
甲(委任者)
住所 ○○○○
氏名 ○○○ 印
乙(受任者)□□□殿
上記委任事項確かに受任いたしました。
令和○年○月○日
乙(受任者)
住所 ○○○○
氏名 □□□ 印
甲(委任者)○○○殿
難しい用語もありますが、意味は簡単なのでこの機会にぜひ覚えておいてください。
委任状の内容
では上記の委任状の内容を、わかりやすく解説します。
委任者(甲)
所有者
受任者(乙)
代理人
売買物件
不動産の住所。登記簿謄本(所在、地目、構造、床面積など)に沿ってそのまま書きます。
売買価格
希望売却価格
手付金額
手付金額。はっきりと金額を決めずに「売却価格の1割」などにしてもOKです。
引渡し日
すべての売却手続きをいつまでに完了させたいか?という日
違約金額
契約破棄の場合の違約金額。手付金と同じく「売却価格の2割」などにしてもOKです。
公租公課の分担起算日
固定資産税・マンション管理費などの精算方法。引き渡し日を起算に日割り精算するのが一般的です。
金銭の取扱いについて
「代金はすぐにこの口座に振り込んでください。実費がかかったら、その分は売却代金から差し引いてください」という内容です。
所有権移転登記申請手続
「所有権移転登記の必要書類は○○司法書士に預けます。あなたにも鍵を渡すので買主へ渡してください」という内容です。
その他の条件
「この委任状に書いていないことは、その都度相談してください」という内容です。
ここが結構重要で、勝手な判断をされると困るときには必ず記載してください。
有効期限
委任状の有効期限。売却が長引いた場合は3ヵ月間の延長ができます。n
「以上」
「以上」の記載は重要です。
あとから代理人にとって有利な条件をつけ足されないようにするため、捺印後の委任状をその場でコピーするのも有効です。
日付
委任日
所有者の住所・氏名・印
「□□□さん、この内容でお願いします」という所有者の意思表示
代理人の住所・氏名・印
「かしこまりました○○○さん、この内容に従って代わりに売却します」という代理人の意思表示
重要なポイントは以上です。
「売却の一切を任せる」というざっくりした委任状は、トラブルの元になるのでやめてください。
その他の必要書類
委任状の作成には、以下の書類が必要になります。
- 実印
- 印鑑証明書(3ヵ月以内のもの)
- 住民票(所有者のみ)
- 本人確認書類(代理人のみ)
不動産会社のフォーマットによっては、代理人の押印が不要なこともあります。
委任状の3つの注意点
不動産売却を依頼するということは、あなたの意向に沿わない売買が成立してしまう可能性もあります。
トラブルになったり損をしないように、委任する際の注意点をお伝えします。
権限の範囲は明確にする
委任状を作成するときは、どこからどこまでを代理人の権限とするのか?という範囲を明確にしてください。
- 値引き交渉は代理人に任せるのか
- 売買契約の締結までも任せるのか
- リフォームや解体の判断はどうするか
あなたの希望をふまえて、これらについて記載内容の追加・変更をしてください。
そんなことまで頼んでない!相談してから決めてほしかった…などのトラブルを避けるには、細かい取り決めが重要です。
不動産会社に伝えると、相応の文言に変更してもらえるのでぜひ相談してみてください。
白紙の委任状は絶対に避ける!
「白紙委任状」とは、条件欄が空白になっている委任状のことです。
サインしてしまうと「すべて任せるので自由にやってください」と意思表示したことになります。
~白紙委任状のトラブル事例~
所有者は、ローンを完済できる価格で売却してほしいという認識でいた。
しかし、代理人がローン残高を大きく下回る価格で売却したため、資金調達が必要になってしまった。
白紙の委任状には、このようなトラブルの危険性があります。
代理人が自分に有利な条件を書き加えることもできてしまうため、絶対に白紙の委任状は避けてください!
不動産会社への委任は仲介手数料が倍になる
「売却を不動産会社に任せたい」という方もいると思います。
不動産会社は売買のプロなので、親族に頼むより安心と思われるかもしれません。
しかし、不動産会社が代理人になると仲介手数料が2倍になります。
【通常の仲介】
法律で決められた上限:売却代金×3%+6万円
【代理販売】
法律で決められた上限:売却代金×6%+12万円
不動産会社に一任する「代理販売」にする場合は、あらかじめ手数料について確認してください。
まとめ
いかがでしたか?
不動産売却でやむを得ない事情があるときは、委任状によって売却を依頼することができます。
委任のポイントは3つです。
- 代理人は信用できる人を選ぶ
- 委任状には権限の範囲を明確に記載する
- 白紙の委任状は絶対に避ける
委任状のサンプルも参考に、トラブルのない不動産売却をしてください!
この記事があなたのお役に立てれば幸いです!
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